この一戦を予想する④ 矢吹 正道

「井上に勝つには、タフで、カウンターパンチャーであること。それが最低条件」

元WBC世界ライトフライ級チャンピオン

矢吹 正道

緑ジム所属




 井上選手のKO勝ちだと思います。フルトンが中盤まで持ち堪えて劣勢だったときに、盛り返そうと思えるのか、それともとにかく判定に持ち込もうとするのか、それによってKOか判定かに分かれると思う。彼と戦う相手は、この前のポール・バトラー(イギリス)のように、「判定までいけば勝ち」みたいな、試合の勝ち負けでなく、倒されないことを目的とした選手が出てくると思うんです。

 フルトンは、左のガードの低さ、左を打った後の雑さが目につきます。それは自分の距離感に自信を持っているからできるもの。比べれば、井上の左は打ったら最短で引く。そこにも差が見えます。

 フルトンに負けたダニエル・ローマン(アメリカ)が、「フルトンはフロイド・メイウェザー(アメリカ=元世界5階級制覇王者)のようだ」って言ってたらしいですが、メイウェザーはL字の形で腕を下げたところから左を打っても、やっぱり最短で打った道を戻すんです。あとは、ジャブの後に素早く左フックを返したりして隙がない。でも、フルトンはそうじゃない。距離感がいいのでこれまでパンチをもらってこなかったし、クリンチやガードでしのいだりしてきた。でも、それを井上に対してできるかといったら、話は別です。

 井上は、フルトンのその隙を見逃さないと思います。フルトンの距離感を、彼は踏み込みのスピードで上回ると思います。

 まとめると…井上の凄いところは、

①左にモーションがない。

②踏み込むスピードがトップレベルで速い

③ピンポイントにタイミングよく打てる

④ハードパンチャー

⑤コンビネーションも強打で打てる

 ざっと挙げてもこれだけあります。

 ロープに詰まる展開が増えれば、フルトンはさらに厳しくなると思います。だからフルトンが井上とうまく戦っていくには、とにかく左をうまく使うことと、井上の入り際にパンチを打って止めることですね。でも、強いパンチを打って止めようとすれば、井上はそれにカウンターを合わせるか、その後を当然狙ってくるでしょう。

 井上に勝つには、タフで、カウンターパンチャーであること。それが最低条件だと思っています。

 でも、井上が今まで戦ってきた対戦相手で、フルトンに勝てる選手は誰一人いないと思います。最大のライバルとなったノニト・ドネア(フィリピン)も、どちらかといえばフック系の選手なので、フルトンにはあのパンチは届かない気がします。ドネアがギジェルモ・リゴンドー(キューバ)にあしらわれたときのようになるんじゃないかと。けれど井上も、バンタム級で全盛期のリゴンドーと戦っていたら、厳しい試合になったと思います。

 フルトンの大きさを警戒する声をよく聞きますが、身長に関していえば、たかが5cm差くらいどうってことありません。実際、自分が戦ってきたときもまったく気になりませんでしたから。それが10cmとかなると、ちょっと違いますけどね。リーチもそうです。記者の方たちは1、2cm差でもいろいろ訊いてきますが、そんなの全然関係ない(笑)。5cm差も問題ない。やっぱり10cm差くらいからですかね。あの踏み込みの速さ鋭さがあれば、井上尚弥なんて何も思わないと思いますよ(笑)。

 井上は、あと1階級上のフェザー級までは普通に獲ると思います。スーパーフェザーになると苦戦すると思いますが。

 当日は、リングサイドで観戦できることになりました。凄い興行なので、演出とか雰囲気を堪能したいし、井上尚弥の戦い方を参考にしたいと思っています。

やぶき・まさみち◎緑ジム所属、元WBC世界ライトフライ級チャンピオン。
戦績19戦15勝(14KO)4敗。
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