「井上に勝つには、タフで、カウンターパンチャーであること。それが最低条件」

元WBC世界ライトフライ級チャンピオン
矢吹 正道
緑ジム所属
井上選手のKO勝ちだと思います。フルトンが中盤まで持ち堪えて劣勢だったときに、盛り返そうと思えるのか、それともとにかく判定に持ち込もうとするのか、それによってKOか判定かに分かれると思う。彼と戦う相手は、この前のポール・バトラー(イギリス)のように、「判定までいけば勝ち」みたいな、試合の勝ち負けでなく、倒されないことを目的とした選手が出てくると思うんです。
フルトンは、左のガードの低さ、左を打った後の雑さが目につきます。それは自分の距離感に自信を持っているからできるもの。比べれば、井上の左は打ったら最短で引く。そこにも差が見えます。
フルトンに負けたダニエル・ローマン(アメリカ)が、「フルトンはフロイド・メイウェザー(アメリカ=元世界5階級制覇王者)のようだ」って言ってたらしいですが、メイウェザーはL字の形で腕を下げたところから左を打っても、やっぱり最短で打った道を戻すんです。あとは、ジャブの後に素早く左フックを返したりして隙がない。でも、フルトンはそうじゃない。距離感がいいのでこれまでパンチをもらってこなかったし、クリンチやガードでしのいだりしてきた。でも、それを井上に対してできるかといったら、話は別です。
井上は、フルトンのその隙を見逃さないと思います。フルトンの距離感を、彼は踏み込みのスピードで上回ると思います。
まとめると…井上の凄いところは、
①左にモーションがない。
②踏み込むスピードがトップレベルで速い
③ピンポイントにタイミングよく打てる
④ハードパンチャー
⑤コンビネーションも強打で打てる
ざっと挙げてもこれだけあります。
ロープに詰まる展開が増えれば、フルトンはさらに厳しくなると思います。だからフルトンが井上とうまく戦っていくには、とにかく左をうまく使うことと、井上の入り際にパンチを打って止めることですね。でも、強いパンチを打って止めようとすれば、井上はそれにカウンターを合わせるか、その後を当然狙ってくるでしょう。
井上に勝つには、タフで、カウンターパンチャーであること。それが最低条件だと思っています。
でも、井上が今まで戦ってきた対戦相手で、フルトンに勝てる選手は誰一人いないと思います。最大のライバルとなったノニト・ドネア(フィリピン)も、どちらかといえばフック系の選手なので、フルトンにはあのパンチは届かない気がします。ドネアがギジェルモ・リゴンドー(キューバ)にあしらわれたときのようになるんじゃないかと。けれど井上も、バンタム級で全盛期のリゴンドーと戦っていたら、厳しい試合になったと思います。
フルトンの大きさを警戒する声をよく聞きますが、身長に関していえば、たかが5cm差くらいどうってことありません。実際、自分が戦ってきたときもまったく気になりませんでしたから。それが10cmとかなると、ちょっと違いますけどね。リーチもそうです。記者の方たちは1、2cm差でもいろいろ訊いてきますが、そんなの全然関係ない(笑)。5cm差も問題ない。やっぱり10cm差くらいからですかね。あの踏み込みの速さ、鋭さがあれば、井上尚弥なんて何も思わないと思いますよ(笑)。
井上は、あと1階級上のフェザー級までは普通に獲ると思います。スーパーフェザーになると苦戦すると思いますが。
当日は、リングサイドで観戦できることになりました。凄い興行なので、演出とか雰囲気を堪能したいし、井上尚弥の戦い方を参考にしたいと思っています。
やぶき・まさみち◎緑ジム所属、元WBC世界ライトフライ級チャンピオン。 戦績19戦15勝(14KO)4敗。 Twitter(@Yabukimasamichi) Facebook(Masa Yabuki) Instagram(masamichi_yabuki)