REVIEW 10.21 サンティリャンvsロチャ, フンドラvsムシーニョ, ラミレスvsバティスタ 

サンティリャンが打撃戦を見事攻略。リスク恐れず戦ったロチャへの賛辞も

 10月21日、アメリカ・カリフォルニア州イングルウッドの伝統会場フォーラムで行われたゴールデンボーイプロモーションの興行。メインのウェルター級世界上位ランカー対決は激しい火花を散らして劇的な結果に至った。WBAスーパーフライ級次期挑戦者決定戦、IBF女子世界フライ級タイトルマッチもKO決着。熱いLAのファンを歓喜させる好ファイトが続いた。

文_宮田有理子 写真_クリス・エスケダ/ゴールデンボーイプロモーション

Text by Yuriko Miyata,  Photos by Chris Esqueda / GoldenBoy Promotion

ウェルター級12回戦

ジョバニ・サンティリャン(アメリカ)WBOウェルター級5位

[KO6回1分13秒]

アレクシス・ロチャ(アメリカ)WBOウェルター級1位

陰の実力者が圧巻のストップ劇

 5位サンティリャンが1位ロチャをノックアウトという、下剋上。待ち望んだ舞台が、これまで技巧派の印象だった男の隠れた戦闘力を引き出したというべきなのだろう。

 カリフォルニアのラティノ、サウスポーの世界ランカー同士でも、これまで築いた人気はロチャが上回る。開始から“ロチャ”“ロチャ”の大合唱の中、リング中央でいずれも引かず壮絶に打ち合った。その激しさこそ、この一戦がもつ意味を映しているようだった。勝てば、ウェルター級“最強コンテンダー”のステイタスが手に入るのだ。

 そもそもWBOは今年の早い段階でテレンス・クロフォード(アメリカ)にロチャとの指名試合をオーダーしていた。が、クロフォードがエロール・スペンスとの4冠統一戦の終了を待つことにロチャ陣営が合意し、指名挑戦が宙に浮く間に今回のランカー対決が決定する。ロチャにすれば、危険は承知、1位のポジションとプライドを懸けた戦いだ。勝ちが順当という予想も多かった。しかし一方、これまで全勝とはいえ代名詞と言える作品のないサンティリャンにとって、「今回こそ、自分が何者かを示すことができる戦い」だった。トンプソンプロから今はトップランク傘下の31歳が、敵陣に乗り込むそのモチベーションの高さが、最大の武器だったかもしれない。

サンティリャンの左アッパーがことのほか有効だった

 黒ベースにメキシコ国旗をデザインしたトランクスもかぶりまくりで、忙しい攻防は目で追うのが大変なほど。サンティリャンの左アッパー、左フックの重ね打ちが奏功し、2回にはロチャが鼻血に見舞われた。もともとディフェンスが軸にある技巧派のサンティリャンは、この近距離の打ち合いに、その良さを生かした。しっかりブロックして下がらず打ち返す。ロチャが頭を下げれば遠慮なく後頭部を打つしたたかさもある。そして今夜のサンティリャンは、見覚えのあるどこか煮え切らないサンティリャンとは別人のよう。どんどん攻撃の回転を上げていくのである。

近い距離の打ち合いで、サンティリャンの防御力も生きた

「それが今回のプラン。単発からはじまって徐々に手数を増したのがうまくいった」。3回も強打の交換が続く。その中でサンティリャンが流れを引き寄せた。そして5回。ロチャが少し距離をとったところに、左ロングアッパーをクリーンヒット。右ダブルをフォローして痛烈なダウンを奪う。ロチャは立ち上がった。応戦するが、右フック連発から左のコンビネーションで、再びフロアに落ちた。でもまた立ち上がる。血しぶきとともに続く打ち合いは、続く6ラウンドに迎えることになる。サンティリャンが左アッパーを効かせてフォローアップ。キャンバスにひざまずくロチャをみて、レフェリーが試合を止めた。6回1分13秒だった。

31歳、キャリア最大の勝利

「私が望み続けた戦いだった。作戦は間違いなかった。プロモーター間の壁を越えて(ゴールデンボーイのロチャとトップランクのサンティリャン)、この試合を組んでくれた皆さんに本当に感謝している。今回のようにプロモーターには、ファンのためにいいカードを組んでほしい。次は? バリオス対ウガスみたいな試合がしたいな」と勝者サンティリャンは、9月30日に行われたWBC暫定王座決定戦、マリオ・バリオス(アメリカ)がヨルデニス・ウガス(キューバ)を破った一戦を挙げた。日陰からライトの下に躍り出た実力者サンティリャンは、32戦全勝17KO。

リスクを冒して戦ったロチャを称える拍手は大きかった

 晴れやかなサンティリャンの会見のあと、かなり間を置いてから、わずかに残った記者の前にロチャもやってきた。目に涙のあとを残しながら一つひとつの質問に答える姿に誠実さがにじみ出る。この一戦、もう少し待てば王座決定戦に格上げされる可能性だってあったかもしれない。4団体統一したクロフォードがベルトを返上するのか防衛するのか結論を出していればである。WBO指名挑戦者のポジションをリスクにさらすことに否定的な声が聞こえても、「これは自分がやりたいと思った戦いだ」と言った。“名実ともに”、ウェルター級の頂上を争うにふさわしいボクサーであると証明し得る一戦だった。

26歳、必ず這い上がると誓った

「初めてダウンをして思ったのは、ここに這ったまま終わるのはいやだということ。ジョバニの作戦に驚きはなかった。アグレッシブに来ると期待していたし、自分も望んでいた展開だったが、今日は彼の作戦と実行が上回った。これがボクシングだと思う。ただ、たくさん声援を送ってくれるファンたちの前で負ける姿をみせるって、こんな辛いことはない。彼らに約束する、僕はもっと強くなって戻ってくる。今日は今までで一番落ち込んでいるけれどね。来週にはジムに戻りたいよ」。連勝は7でストップしたが、その階段をもう一度上がる決意を語った26歳のロチャは、25戦23勝(15KO)2敗。

IBF女子世界フライ級タイトルマッチ10回戦

ガブリエル・フンドラ(アメリカ)挑戦者

[KO5回1分18秒]

アレリー・ムシーニョ(メキシコ)チャンピオン

フンドラ妹が女王ムシーニョを粉砕

175cmのサウスポー、フンドラの打ち下ろしは強烈

 長身175cmのサウスポー、フンドラ妹の強さは半端じゃない。初めての世界王座獲得から12年以上、暫定を含め5つのタイトルを集めてきた34歳の女王ムシーニョを、完膚なきまで粉砕してしまった。

 身長差15cm、そびえたつ挑戦者に向かって開始からアグレッシブにパンチを繰り出したムシーニョに、フンドラは左ストレート、右フックを打ち下ろした。その初回終盤には、左フックを脇腹に叩きつけて、チャンピオンをずるずるとコーナーに後退させる。挑戦者の無慈悲な拳が振り下ろされるたび、どよめきが起きた。3回。フンドラはギアを上げて攻めにいく。そして5回、左からの右フックでムシーニョをフロアに這わせた。立ち上がったもののメキシコのベテランの足元は定まらない。主審ジャック・リースが続行を決めるまでの時間は、あきらかに10秒を超えていたが、それは再開後の展開を変えるものではなかった。ダメージ深いチャンピオンに、フンドラが右フックを連発し、ロープへ追う。レフェリーがロープダウンをとったところで、チャンピオンサイドから白旗があがった。

無敗、初挑戦で世界王座を奪取したフンドラ妹

 新チャンピオンのフンドラは、12戦12勝5KO。元WBC暫定スーパーウェルター級チャンピオンの兄セバスチャンとともに、父フレディのもとでボクシング漬けの青春を送った22歳。「練習でも試合でもそこに集中することを一番に考えている」。この強さ。長い時代を築くかもしれない。4月に暫定王座を失ったセバスチャンは、「初めての負けから学んだことを生かしていきたい」と、来年早々の再起を目指している。

 初防衛に失敗したムシーニョは、39戦32勝(11KO)4敗2分。ちょうど1年前、レオネラ・ユディカ(アルゼンチン)を僅差で破ってIBF王座を奪取し、世界王座に返り咲いた時、夫の元WBOライトフライ級王者アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)と目指す“夫婦同時世界王者”に「一歩近づいた」と大きく腫れた瞼を嬉し涙で濡らしていた。いま再び一歩後退したとはいえ、1歳年下の夫と目指す道は変わらないかもしれない。アコスタは今年4月に無敗のアンジェリノ・コルドバ(ベネズエラ)に僅差判定で敗れたが、8月に再起している。

WBAスーパーフライ級挑戦者決定戦12回戦

ジョン・ラミレス(アメリカ)WBA2位

[KO4回2分33秒]

ロナル・バティスタ(パナマ)WBA7位

“スクラッピー”ラミレスが次期挑戦権を掌握

今回は冷静な試合運びが奏功した

 この日のセミファイナル、2位ジョン・ラミレス(アメリカ)と7位ロナル・バティスタ(パナマ)によるWBA世界スーパーフライ級挑戦者決定戦。エネルギッシュな攻めで知られる“スクラッピー”ラミレスが、今回は落ち着いた試合運びが印象的だった。長いジャブを出して深く構えるバティスタに対し、プレスをかけながら様子をみて、初回の終盤には強打を差し込んだ。2回に入るとバティスタが細かいパンチでリズムを乱そうとするが、ラミレスはウェートを乗せたワンツーですぐにそれを封じ込めた。3回終盤、ラミレスがワンツーからストレートのような左ジャブを間髪入れずつなぐと、それがクリーンヒット。そこから最初の山場をつくった。バティスタの懸命の粘りで試合は4回に進んだものの、もう時間の問題だった。ラミレスはさらにギアを上げる。圧力をかけて猛攻し、左ボディでバティスタをひざまずかせた。一呼吸おいてのダウンから苦悶を抱えたまま立ち上がったパナマ人を、こんどは逃がさない。ロープ際に追い、フック三連打を叩きつけてフロアに落として、レフェリーストップを呼び込んだ。時間は4回2分33秒KO。

WBA次期挑戦権をつかんだラミレス

 スパーリングパートナー探しに苦労し、ジュリアン・チュア・トレーナーとのジムワークで準備をしてきたというラミレスは、「コーチに感謝する。ボディは何度も何度も練習してきたものだ」と語った。戦績は13勝9KO。WBA次期挑戦権を手に入れてチャンスを待つ。敗れたバティスタは19戦15勝(9KO)4敗。

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