「尚弥さんのパンチは“脳内震度7”。わかってもらえます?……」

日本バンタム級チャンピオン
堤 聖也
角海老宝石ジム所属
最初に告白すると、フルトンの試合はついさっき、ブランドン・フィゲロア(アメリカ)戦のハイライトを見ただけなのでその範囲でしか語れないんですけど、あの立ち位置、ポジション取りの巧さは、かなりやっかいですね。
頭をずらしてクリーンヒットを外しながらポンポン当てていく。相手に手を出させながら徐々に通用させなくさせていく。嫌なディフェンス技術とスピード、距離と空間支配力を、尚弥さんがどう攻略していくのか、ものすごく気になります。あの感じで尚弥さんをさばいたらフルトン、マジでヤバいなと思うけど、尚弥さんがうまく試合を運べないイメージがつかない。
フルトンはどう勝とうとするんだろう。
尚弥さん、思い切り打ち込むじゃないですか。そこに抜群のタイミングでバチコーンってカウンターが入ったら、いくらパンチのないやつでも効かせられると思うんですよ。そこに勝算を持っているのか、それをする自信があるのか。
アウトボクシングを徹底するにしても尚弥さんが空振りしまくってるみたいな印象を与えないとポイントは取れない。それをする自信があるのかな。うーん。
いままでも尚弥さんは階級を上げた初戦で、毎回あり得ないインパクトを残してきたじゃないですか。
オマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦だって、ジェイミー・マクドネル(イギリス)戦だって、意味わかんない強さだったじゃないですか。あの強さ、おかしいもん……。
あれは減量苦から解放されるコンディション的な部分と、未知の領域への危機感がなせる技じゃないかと思うので、今回もサプライズ的パフォーマンスに、どうしても期待してしまいますよね。
今回、体格差や相手の耐久力を不安視する声もありますけど、僕は全然通用すると思います。
もし尚弥さんのパンチ力が通用しなくて耐えられるレベルだとしたら、フルトンがさばききれる可能性も出てくるけど、多分無理だと思うんだよな。だって尚弥さん、おかしいパンチ力してるから。
僕がスパーリングさせてもらったのは、最初が大学2年のとき。尚弥さんがスーパーフライ級の初防衛のときで、最後がファン・カルロス・パヤノ戦(ドミニカ共和国)の前です。
なんかね、殴られてる痛みじゃないんですよ。痛みじゃなくて、衝撃。思わず「脳内震度7」って言葉が出てきたんですけど、衝撃度と破壊力わかってもらえます? それ14オンスのデカいグローブでヘッドギアつけて、ワンツーとかで、ですよ。
そんなジャブ、ワンツーを隙間なく打ってこられてバンバン圧力をかけられていると、自分が当てにいくという意識がどんどん失われていく。さらにはこの3分をどう生き延びよう、という意識にさせられるんです。それが何度かあった。そう、本能が生命の危機を感じたんだと思います。
やられたこともそうだけど、それ以上に自分がそういうメンタルにさせられたことが悔しかったし、本当にショックでしたね。
一度、致命的なタイミングと角度でボディーを打たれそうになって、ヤバいって覚悟した瞬間があったんです。でも尚弥さんは打ってこなかった。要は僕が倒れたら練習にならないわけで、なるほどこんなに実力差が広がっちゃってんのか、俺も強くなってるはずなのに、って……。
たとえクリーンヒット一発で効かせなくても、「脳内震度7」パンチ力は相手の心を崩していくと思います。
尚弥さんのパンチを体感したフルトンが、どういう精神状態になっていくのか、描くゴールを途中で変えるのか、そのあたりも見所かなと。
僕はもう階級が違うから、純粋に楽しみます。技術戦を見たいです。一般の人にはわかりづらいかもしれないけど、高度な領域の技術戦が見たい。フェイントの掛け合いだったり立ち位置の駆け引きだったり、お互い手を出してないのにやばいことしてる、みたいな。
試合は物凄い駆け引きの頭脳戦、技術勝負になるかもしれないし、尚弥さんがファーストコンタクトで思いっきり効かせて終わらせる展開も全然想像できちゃう。勝敗予想は、序盤1か2ラウンド、もしくは6、7ラウンドでの井上尚弥KO勝ちと見ます。
つつみ・せいや◎角海老宝石ジム所属、日本バンタム級チャンピオン。10戦8勝(7KO)2分 Twitter (@GoodOzanari) Instagram (punch_burger_223) 試合チケット受付サイト Tsutsumin.boxing-ticket.com