“右”でリードした村地を、“焦りなき”王者・高山が技と強打で逆転ストップ
強打のサウスポー高山涼深(ワタナベ)と前WBOアジアパシフィック同級王者・村地翼(駿河男児)の一戦は、村地がセオリーに反するサークリングで高山を戸惑わせたものの、強打と圧力に優る高山が、合計3度のダウンを奪ってTKO。初防衛に成功した。
文/本間 暁 写真/山口裕朗
Text by Akira Homma Photos by Hiroaki Finito Yamaguchi

☆9月22日/東京・後楽園ホール
日本スーパーフライ級タイトルマッチ10回戦
○高山 涼深(26歳=ワタナベ)チャンピオン
●村地 翼(26歳=駿河男児)1位
TKO7回2分44秒
序盤は村地が右回りステップと右リードでペース握る
サウスポーの高山に対し、いわゆる定石とは逆の右回りステップを徹底的に重ねた村地。そこから右リードブローを差したかと思えば、ほんの1拍置いてから素早く突き刺すワンツーストレート。村地はこの2種類の右攻撃を駆使し、立ち上がりから高山のリズムを壊しにかかり、ペースをつかんでいった。
村地の右に意識を取られていた高山は、村地の返しの左フックにも驚かされたことだろう。タイミングが合っていて、カウンターで決まればダメージを与えそうなキレも感じられ、効果的なスパイスとなっていたと見る。

村地はさらに、右へのサークリングだけでなく、時に動きを止めて、右ストレート、左フックを打ちこんだ。この土俵には大きな自信を持っているだろう高山は、左ストレート、右フックを合わせにいき、両者カウンター合戦の様相となる。村地主動で始まったこの間合いでの打ち合いに、驚いたのは高山のほうだったかもしれない。
けれども、一撃の強さで1枚上手だったのは高山だった。3ラウンドに右フックでダウンを奪われ、その威力を徐々に思い知らされていった村地は、戦術としてのサークリング、右回りから、圧を受けて回避するフットワークへと変わっていったように見えた。5ラウンド終了時のスコアでリードしていたこともあり、このままポイントアウトしようという思考になったのではなかろうか。
しかし、追う者と追われる者のメンタルとは、実に繊細なものである。逃げる村地を追いかける高山の勢いは加速する。ポイント挽回に躍起になって焦るのでなく、高山は村地を倒しにかかり、そのためにどうすべきかを熟知していた。
村地の右回りを止め、正面の戦いへ引きずり込むためには──。高山はそれを冷静に遂行した。フックとアッパー、この左ブロー2つで村地のボディを打った。
高山がボディブローで村地を正面にセット

高山のボディブローは村地にダメージを与えたようだ。これを打たれたくないために、村地は右への動きを止めたのだろう。さらに、序盤から繰り返したフットワークでスタミナも少なからず使っていた。村地を正面に留めさせた高山は7ラウンド、通算2度目のダウンを奪うと、続けて左アッパー、ストレート、右フックと、練習の成果だろう上下のコンビネーションでもう1度倒し、レフェリーストップに持ち込んだ。
高山が、セオリーとは逆に動く村地に戸惑い、焦りを募らせたまま試合が進んでいたならば、村地を捕えきることはできなかったかもしれない。が、ポイントをリードされながら、むしろ高山は落ち着きを取り戻していたかのようだった。どこかで捕まえられる、捕まえる術を持っている。そういう絶対的な自信がきっとあったはずである。
最高のスタートから前半を終えた村地。序盤に見せた正面での打ち合いを、高山の勢いが増す前にもう1度仕掛けられていたら……。危険がともなうことは明らかだが、自分主動と相手主導では、同じ行動を取るにしても意味合いも結果も変わってくるというもの。そこがボクシングの難しさであり、奥深さでもある。健闘し、惜敗した村地が、試合の流れや雰囲気を感じつつ、勝負をかけられるようになれば、きっとふたたびベルトを腰に巻ける日は来るはずだ。