REVIEW 9.22 京口紘人vs.ジャーベン・ママ

豪快の裏に巧みな技あり。エネルギッシュな京口が帰ってきた

ミニマム級、ライトフライ級に続き、世界3階級制覇を目指す京口紘人(ワタナベ)。フライ級転向第2戦は、前戦で痛めた両拳も癒えてエネルギー全開。持ち前の豪快さに加え、裏技ともいえる京口の隠れた武器も存分に発揮されるものとなった。

文/本間 暁 写真/山口裕朗
Text by Akira Homma Photos by Hiroaki Finito Yamaguchi

ボディブローと見せかけてアッパーで倒す

☆9月22日/東京・後楽園ホール
フライ級10回戦
京口 紘人(29歳=ワタナベ)WBA4位
ジャーベン・ママ(26歳=フィリピン)フィリピン2位
KO3回3分9秒

左ジャブと相手を置き去るテンポ。これが京口の隠れ技

「今回は倒して勝つ」。明確に強固な意志を持って臨んだ京口が、エネルギー溢れるパフォーマンスを繰り広げた。高く掲げた強力なガードでママの強打を完璧に止め、上体をゆるやかに、ときに速く左右に振りながら、その動きと“ずらして”刺す左ジャブをヒットする。さらに、ママの攻撃の呼吸を読み切って、放たれた腕の戻し際に差し込んでいくジャブも有効だった。

 相手の腕の引き際に差す左ジャブ──。これは、唯一の敗戦を喫した寺地拳四朗(BMB)戦序盤でも有効だったもの。京口といえば「豪快なアッパーカット」、「左ボディブロー」ばかりが目を惹くが、実は彼のボクシングを形成する重要なアイテムが左ジャブなのである。

 体全体で刻むリズムは決して速くない。だから一見すると、京口のスタイルはのっそりとしているように感じてしまう。しかし、スローテンポに相手を引きずり込みつつ自らはテンポを速め、パッと置き去りにする術を持っているのである。

体の揺すりとズラシて打つジャブ、相手のパンチの引き際に打ち込むジャブが武器

逃げる相手を詰めていく足運び

 左ジャブ、右オーバーハンドとテンポアップした攻撃で圧をかけられた相手は、気がつけばロープを背負っている。この場所こそが京口のテリトリーだ。そうして右から左ボディ、さらには左フックと、強弱もつけながら加速していく連打が始まるのだ。

 ロープを背中に感じた相手は、連打が始まる前にサイドへ逃れようとする。しかし、京口はそれを許さない。逃げる相手を最短距離で追い詰める、横や斜め前への小さな足運び──ローマン・ゴンサレスやゲンナジー・ゴロフキンら世界のトップファイターが装備する「カッティングオフ」──を駆使して。それも、速い刻みでステップするのでなく、ゆるりぬるりと、である。
 速いサイドステップで逃げたはずなのに、京口との距離やポジションは同じまま……。これだけでも相手は精神的な部分を削られてしまうのだ。

 前戦では両拳を痛めた影響か、テンポの上げ下げができず、単調なボクシングになってしまったが、この日は体全体のコンディションも良く、パンチも実にキレていた。それを本人も実感していたのだろう。すべてがエネルギッシュだった。

豪快な左アッパー。これが最大の必殺ブローだ

 最後に決めた左アッパーは、上体を左斜め前に倒して、ママの右ブローを顔の右側へと流しながら打ち上げたもの。それまで徹底して攻めたボディブローが伏線となり、それを意識させた上で意表を突いた。加えて、ママは自分の右腕が自身の視野を邪魔しており、京口はそこも当然見越して放った必殺ブローだったと思う。

 フライ級に上げ、足の踏ん張りもしっかりと利いていた。足指でキャンバスを噛めているように見えた。寺中靖幸トレーナーとのフィジカルトレ効果も大いに感じられた。
 かつては強い右ストレートを打ちこむと、上体が流れがちだったが、この日はそういうシーンは皆無だった。右を打って終わらずに、左ボディーへ繋ぐ意識も働いていたこともひとつ。きっと本人にも“バランスの乱れ”を改善する意識があったのだろう。この日のボクシングは非の打ち所がないように見えた。

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