無敗イェリツィアンがWBC地域王座獲得

2月23日 カリフォルニア州サンタイネス・チュマシュ・カジノ 360プロモーション興行
Photos Courtesy of Lina Baker/360promotion Text by Yuriko Miyata
トム・ロフラー率いる360プロモーションの「Hollywood Fight Nights」は、コロナ禍が明けてからハリウッドを飛び出して続く月例興行。今回のチュマシュ・カジノは、そのうち年4興行を契約する会場である。チュマシュは、アメリカ各地に点在するインディアン自治区の一つ。独自の法を持ついわば「国」のようなもので、ボクシングの興行はたいてい当該州コミッションが担当するが、規制がやや緩めに感じられたりする。今回でいうと、コーナー下に入るチームの人数が3人以上いても許される、という具合……。ちなみに来週、阿部麗也(KG大和)が世界挑戦するニューヨーク州のターニング・ストーン・カジノは、「オネイダ族」の「オネイダ国」にあって、「オネイダ国コミッション」が管轄する。
今回の今年最初のチュマシュ大会は、全6試合だった。
第一試合スーパーフェザー級6回戦では、2021年世界選手権銅メダルのキューバ人、オスベル・カバジェロ(5勝4KO)がジェイソン・ブエナオブラ(フィリピン、10勝4KO10敗3分)を一方的に攻め、4回2分22秒、連打でストップした。元トップアマから2022年にプロになった28歳。2021年世界選手権を最後に、メキシコへボートで亡命した。アメリカへの入国が許されるまで、メキシコで1年以上過ごす中で4戦を経験した。今回は、ようやくたどり着いたアメリカのリング。KO勝利をレコードに加えて、安堵の表情がみえた。昨年、さきに新天地入国を果たした同胞二人と、ロサンゼルスのマニー・ロブレスのジムで合流。この1月は、世界3階級制覇へむかう中谷潤人(M.T)のスパーリングパートナーを務め、「なかなか当てさせてくれない」と言わせた。アシスタント・トレーナーのエドガー・ハソは「キューバ人3人の中で一番、頭を使って対応する選手」と。アメリカン・ドリームを急ぐ28歳だ。

セミファイナルのスーパーライト級10回戦は、 “オールKO”の若きファイター、ケイン・サンドバル(アメリカ)が、元五輪代表のベテラン技巧派、ハビエル・モリナ(アメリカ、22勝9KO6敗)を迎える、興味深いマッチアップだった。2019年に岡田博喜(角海老宝石)を破り、元世界2階級王者ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)とフルラウンド戦ったモリナは、4連敗中で2年ぶりの実戦。今回もリングサイドではモリナの経験値を買う声が聞かれ、立ち上がりから間合いの巧さをみせた。しかしサンドバルはパワー、勢いであっという間にベテランを圧し返した。これまで全試合6ラウンド以内に終わらせていて今回は初10回戦のサンドバルは中盤ややペースダウンしながらも、連続KOを守るべく攻め続ける。が、力一杯のパンチは、モリナに耐え切られた。採点は三者とも100対90。12戦12勝11KOのサンドバルは殊勝に「相手の経験を感じた」と語った。カリフォルニアの北部サクラメントが拠点。「ロサンゼルスあたりに比べると、選手の数は少ない」。練習相手を求めて何時間も車を走らせるのが日常だという21歳、二児の父は、コンテンダーへのスタートラインに立ったばかりだ。


メインイベントはWBC米大陸ウェルター級王座決定戦10回戦。無敗のアルメニア人ゴール・イェリツィアンが、クィントン・ランドール(アメリカ 13勝3KO2敗1分)にほぼフルマークの判定勝ちでベルトを手にした。守りが主体のランドールを相手に、打って出て、ときには引いてみて、なんとかパンチ交錯のチャンスを作り出そうと、イェリツィアンは粘る。が、ランドールは危険回避に徹し、それに尽くした。ジャッジのふたりは100対90をつけ、残るひとりも99対91。勤勉な手数に対するまっとうな評価だった。イェリツィアンは18戦全勝14KO。ロサンゼルス近郊にはアルメニア人の巨大なコミュニティがあり、この日も大応援団が駆けつけた。興奮しすぎてリングサイドのバリケードを破るほど、熱い応援だった。トップランク興行に連続出場し、モリナが岡田を倒した同じ日、同じ興行で、現日本王者・坂井祥紀(横浜光)を判定で破っている。順調にみえたキャリアはコロナ禍を経て激変。母国へ帰らざるを得なかったが、単身で名匠フレディ・ローチのもとへ戻ってきた。29歳、厚いウェルター級シーンにどう分け入るか、見守りたい。
