
2024年5月。いまバンタム級4名の現世界チャンピオン全員が、日本の中にいる。その稀有なる状況、近づく3つの同級世界タイトルマッチの行方に、WBCバージョンのベルトを保持する世界3階級制覇者・中谷潤人(M.T)以上にアンテナを張る人はいないんじゃないか。過日、リングマガジン選のパウンド・フォー・パウンド、トップ10入りを果たしたチャンピオンに、ずばり展開を予想していただいた。なお、ここに登場する選手たちのなかで中谷自身が実際スパーリングで拳を交えた経験があるのは、井上拓真のみ、という。
写真:山口裕朗 取材:宮田有理子
[IBF世界バンタム級タイトルマッチ(5月4日・大阪)]
エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)
王者 31歳 身長168㎝ 25戦22勝(13KO)2敗1NC
vs
西田凌佑(六島)
挑戦者1位 27歳 身長170㎝ サウスポー 8戦8勝(1KO)
「ともにカウンターを狙う、というか間合いを把握して戦うタイプなので、最初はちょっと探り合いになるのかなとは思います。が、ロドリゲス選手は出ることもできるので、そこらへんでロドリゲス選手がもっていくかな、というふうには予想しています。西田選手はパンチではなく、距離の巧さを武器にする選手だと思いますが、今回はロドリゲス選手という距離の把握能力が高いボクサーが相手なので、苦労するんじゃないかなと思います。結果がどうなるかわかりませんが、僕の中で一番いま戦ってみたい相手は誰かと聞かれたら、興味があるのはロドリゲス選手です。距離を大事にするカウンターパンチャーで、ぐいぐい入ってくるっていうイメージはないので、エサを撒いて、それに合わせてくるとか、そういうタイプの選手なので、やったらヒリヒリするだろうな、って想像しています。井上尚弥選手と戦っていますから、じゃあ僕がやったらどういう内容になる? ってことも、コアなファンは気にしているって思います」
[WBO世界バンタム級タイトルマッチ(5月6日・東京)]
ジェイソン・モロニー(オーストラリア)
王者 33歳 身長165㎝ 29戦27勝(19KO)2敗
vs
武居由樹(大橋)
挑戦者5位 27歳 身長170㎝ サウスポー 8戦8勝(8KO)
「武居選手には倒すパンチがある、という点ですよね。当たったらわからない、ってやっぱりボクシングの面白いところではありますよね。武居選手はそういう大きな武器を持っている選手。ただし、それはそうとして、ボクシングの方の技術力でオールマイティに戦えるのが、モロニーというボクサーですよね。そういう二人のうち、最初にどちらが距離を支配するか、注目しています。武居選手は遠い距離。モロニー選手的には近い距離がいいと思うんで、そこをどういうふうにモロニー選手がとっていくのかですよね。もちろんモロニー選手が遠い距離でもうまくコントロールする可能性もあると思います。でも遠いところは、武居選手のパンチが生きる領域なので、そこをつぶさないといけないんじゃないかと、僕としてはみています。とはいえモロニー選手は基本、“何でもできる”選手。以前対戦した井上尚弥さんも、彼のそういうところを評価しているんじゃないかと思います。モロニー選手を見ていると、“行く”と“離れる”を分けていないんですよね。どっちなのかをあやふやにできる。そうすると相手の方は合わせづらかったりします。僕も彼の弟のアンドリューと戦って……最終的には出て来たところを倒しましたけれど、そこまでは来てもすぐ引くというか。お兄ちゃんも同じで、KOのタイミングを遅らせる、十分に焦らせてくる。武居選手の“一発”に対しても、避けたらすぐプレッシャーかけたりできる選手なので。そういう駆け引きができればモロニーが持っていくかな、と思います。前に武居選手の対ブルーノ・タリモ戦を見たときに、まだボクシングの幅が広くないというか、苦手な領域がはっきりありましたから、モロニーとしては“イメージ”を作りやすいのかな、とも思います」
[WBA世界バンタム級タイトルマッチ(5月6日・東京)]
井上拓真(大橋)
王者 28歳 身長164㎝ 20戦19勝(5KO)1敗
vs
石田 匠(井岡)
挑戦者1位 32歳 身長173㎝ 37戦34勝(17KO)3敗
「はい。これはけっこう、出方次第、という感じ。拓真選手は前戦(ジェルウィン・アンカハス戦、2月)で倒して勝って、いい感触、“いける”っていう心をもっていると思うので。そこへどれだけ石田選手のジャブが生きるか、っていうところと、拓真選手がどれだけそれを殺せるか、っていうところですよね。多分、体のどの部分であれジャブが当たれば石田選手はリズムをつかむと思うので、拓真選手はいかに外すか、さらに、外して中で戦えるか、っていう部分が重要になる試合かな、と思います。前回、拓真選手は中に入って戦う感覚をつかんだと思うので、今回もそうする可能性が高いと思いますが、それは石田選手にとっても、追わずに戦える形になります。拓真選手は、インサイドでのディフェンスが重要になりますね。拓真選手とスパーリングをしたときに、体の強さを感じました。総合すると……拓真選手が勝つかな…。一番には、やはり2月にいい試合をして勝っている、そのいい感触を持ったまま試合ができるっていうことですよね。空回りさえしなければ、それが一番の追い風なんじゃないかと思います」