[熱闘Review 8.3]11試合ぶりのフルラウンド経てクロフォードが世界4階級制覇に成功。バレンズエラは初戴冠。 

スーパーウェルター級初戦で世界タイトル獲得に成功したクロフォード。子供たちをリングに上げた (Mark Robinson/Matchroom Boxing)

 アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスのBMOスタジアムで8月3日、サウジアラビア発のプロモーション“リヤド・シーズン”の海外進出初興行が行われた。現役最強ボクサーの筆頭、テレンス・クロフォード(アメリカ)の世界4階級制覇を懸けたWBA世界スーパーウェルター級チャンピオン、イスライル・マドリモフ(ウズベキスタン)への挑戦をメインに、主役級の組み合わせをいくつも含む、全8試合+エミネムのパフォーマンス。サウジアラビアの娯楽大臣トゥルキ・アラルシクが仕掛けた9時間に及ぶ大イベントは、マッチルームがオペレーションを担い、トップランク、PBCと既存の大プロモーターたちが協力して実現した。そして今後も、アラルシク氏はプロモーターの垣根を超えた好カードを提供していくと宣言している。

Photos courtesy of Mark Robinson/Matchroom Boxing Melina Pizano/Matchroom Boxing , Text by Yuriko Miyata

☆WBA世界スーパーウェルター級タイトルマッチ/WBO暫定同級王座決定戦

○テレンス・クロフォード(アメリカ)挑戦者 世界3階級制覇者 41戦41勝(31KO)

●イスライル・マドリモフ(ウズベキスタン)チャンピオン 12戦10勝(7KO)1敗1分

――判定3-0(116対112、115対113、115対113)――

※クロフォードがWBA王座奪取、WBO暫定王座獲得。マドリモフはWBA王座初防衛に失敗。

パウンド・フォー・パウンド最強のひとりクロフォードは序盤、右ジャブで距離を支配(Melina Pizano/MatchroomBoxing)

 試合が終わり、会見の壇上に先に着いたトレーナーの“ボーマック”ことブライアン・マッキンタイアが、「ほぉっ…」と深いため息とともに冷や汗をぬぐう仕草をみせた。ずっとともに歩んできたテレンス・クロフォードのコーナーについて、肝を冷やすなんて実際、いつ以来なのだろう。2014年3月に敵地イギリスでリッキー・バーンズからWBO世界ライト級王座を奪い取って以来まる10年、世界タイトルをかけて戦い、勝ち続けてきた。そうして全階級全現役最強の議論の中心に陣取った無敵ボクサーはこの夜、WBA世界スーパーウェルター級王者イスラエル・マドリモフを破り、世界4階級制覇に成功。大方の予想の通りに。しかし、2016年7月のWBO・WBCスーパーライト級王座統一戦、ビクトル・ポストル(ウクライナ)戦を最後に最終回終了のゴングを聞いたことがないクロフォードの連続KO/TKOは、11で止まった。冷静に考えれば、驚くべきことではない。昨年7月29日に、ウェルター級(147ポンド)完全制覇最後の宿敵エロール・スペンスJr.(アメリカ)を圧倒して以来、実戦は1年ぶり。スーパーウェルター級(154ポンド)“デビュー”での世界挑戦。チャレンジングと呼べる要素は揃っている。だがベルトを肩にかけて会見場に入ったクロフォードは、その部分については否定した上で、マドリモフを称えた。

「絶好調だったよ。147ポンドも154ポンドも違いはなかった。右をいくつかもらっても、問題じゃなかった。それによって彼がそのラウンドを獲ったとは思うけれどね。イスライルはすばらしい選手なんだ。プロで10戦ほどと言ってもアマチュアで300戦以上もやってる。彼の右パンチや動きに驚かされることはなかったが、驚かされたことと言うなら、彼の我慢強さだ。彼の過去の試合のようにワイルドに出てくるところにカウンターを狙うつもりだったんだけれど、今日の彼はワイルドに来なかった。とても我慢強く戦った。いいゲームプランを立てて来たね」  

元トップアマ、マドリモフは、”憧れの人”クロフォードにフェイントをかけて右をヒット(Mark Robinson/Matchroom Boxing)

 新王者の言うとおり。マドリモフは素晴らしかった。現役最高のボクサーと対する戦略を立て、準備をし、実行する。2年前、ドミトリー・ビボル(ロシア)がサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)の無敵神話を破った時と同じ、ジョエル&アントニオのディアス兄弟が参謀であることも、偶然ではないだろう。元々、数は少なくても10回戦でプロデビューすることを許された、総合的な戦力を備えたファイターだ。3月にマゴメド・クルバノフ(ロシア)を5回にストップし、初めて手にした世界王座の初防衛戦でクロフォードを迎えることを、躊躇しなかったという。

「即決だった。私はずっとテレンス・クロフォードのファンだったんだ。彼のスタイルが好きなんだ。素晴らしいボクシングだ。そして私はずっと、彼を初めて破る男になりたいと思ってきた。彼には弱点がない。私も見つけられない。でも、見つけてみせるよ。彼は階級を上げてやってくる。私は王者であり、ここは私の階級だ。彼がどうするかを考えるのではなく、私は私の目標を達成することだけに集中する」

 プロモーション中のウズベキスタン人の決然とした言葉を、観戦者が理解するのはラウンドが進んでから。高IQボクサー同士、緊迫感あふれる序盤の探り合いは、達人クロフォードがリードしていた。左構えから前の右手を指揮棒のように使ってマドリモフのジャブが届かない距離をつくり、右を誘い出してカウンターを狙う。ガードの下から右アッパーを差し込んで左、多彩なコンビネーションを繰り出して、3回までに、いつものように相手を読み切ったかに見えた。ところが、4回からクロフォード圧勝ムードが揺らぎだした。絶えずボビングし、動きを止めずに少しずつ距離を縮めるマドリモフのジャブと右が、当たり始めるのだ。クロフォードがそこへ左ボディを合わせに行っても、マドリモフは怯まない。続く5回は、マドリモフのベストラウンドになった。独特のリズムでプレスして、右ストレートに右オーバーハンド。角度を変えて右強振、左フックまで。避けたクロフォードが足を滑らせてバランスを崩し、会場に大きなどよめきが起きる。6回。危機感を持ったはずのクロフォードの右ジャブが冴え、左ストレートやボディも厳しさを増すと、7回にはさらにマドリモフが攻めの手を強めた。クロフォードが左をクリーンヒットすればマドリモフが右を当て、クロフォードの左目に、腫れが見える。9回、10回、高度なチェスマッチでマドリモフがヒット数で上回るころ、多くの観戦者が手元の採点を確かめたことだろう。あれ…どっちがリードしている? しかし、やはり現役最高ボクサーである。クロフォードは左ボディ、左右をまとめ打ってチャンピオンシップラウンドを譲らなかった。左右スイッチして最後まで抵抗したマドリモフともども、終了のゴングが鳴ると両手を高く掲げた。

11試合ぶりに判定を聞いたクロフォードは、マドリモフを称えることも忘れなかった(Mark Robinson Matchroom Boxing)

「イスライルはタフだった。チェスマッチだった。彼は我慢強く、私も我慢強くなければならなかった」。目を腫らしたクロフォードは4階級目の世界王座を手に言った。そして一方のマドリモフは、ベルトを失いはしたものの、人生最大の戦いで世界にその名を誇示したことは間違いない。「パウンド・フォー・パウンド最強の前で、私は自分のリズムを保ち続けることができた。全ラウンド、競っていたと思う。再戦に値するはず。クロフォードが最強だと認めるが、私はもっと強くなって戻ってくる」。

 フリーエージェントのまま、サウジアラビアの娯楽相トゥルキ・アラルシクの寵愛を受けるクロフォードは、再びリヤド・シーズンに登場することになりそう。154ポンド階級で前人未踏の3階級完全制覇を目指すのか、べつの挑戦をするのか…いずれにせよ、年齢的にも、長いブランクはマイナスなはず。遠からず、次のアナウンスが聞けると期待しよう。

フリーエージェントのキング、クロフォードを家族のようなチームが支えている(Melina Pizano/MatchroomBoxing)

☆WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ

〇ホセ・バレンズエラ(アメリカ) 挑戦者5位 16戦14勝(9KO)2敗

●イサック・クルス(メキシコ)チャンピオン 30戦26勝(18KO)3敗1分

――判定2-1(116-112、116-112、113-115)

※バレンズエラが王座奪取に成功。クルスは初防衛に失敗。

本来の好戦スタイル封印、バレンズエラ(右)はボクシングに徹してクルスを封じる(Mark Robinson Matchroom Boxing)

 このWBA世界スーパーライト級タイトルマッチがセミファイナルに抜擢されたのは、飽くなき闘犬“ピットブル”クルスの人気ゆえだろう。王座交代にブーイングしたのは、そのピットブルの熱烈なファンに違いないが、今日はバレンズエラの大願成就を、何をおいても祝福すべきだ。世界レベルにおける経験の、格段の差を考えれば、大アップセットというべき勝利だった。

 大歓声を浴びる突貫ファイター、クルスがいつものとおりスタートからガードを固めて前に出た。そして、バレンズエラは敢然とファイトプランを遂行する。17センチの身長差を生かすサウスポーは、右ジャブでつくるスペースを使って、左ロングを上下に送り込んだ。“ピットブル”はピッチを上げて右オーバーハンドで襲い掛かり、2回には相手のジャブを破って左フックを叩きつける。だがバレンズエラは怯まない。序盤はクルスの攻めがボリュームで上回るが、3回あたりから左ヒットに力感が増したバレンズエラが中盤戦、ペースを握った。右ジャブを絶えず使いながら、クルスの入り際を左カウンター、右アッパーで叩き、入られればクリンチ。9回、ローブローを食っても休憩のオファーを断って、集中力を切らさずヒット&ムーブでクルスを翻弄する。どうしてもそのペースを打ち砕かなければならないクルスは11回、ものすごい勢いで攻めにかかった。必死のチャンピオンに冷静に対応してみせたバレンズエラはラウンド終盤、クルスの右一発を浴びてピンチに陥った。しかしこのピンチをゴングまで凌ぎ切ると、最終回はクルスの猛攻をさばき切って戦い終えた。

“ピットブル”クルスは飽かず強振を狙って前に出続けたが(Mark Robinson Matchroom Boxing)

「夢が叶い、言葉が見つからない。今日はとにかくスマートに戦うことに努めた。緊張せず、焦らず、冷静に。スピードとフットワークを使い、ずっと自分を律することができたと思う。この栄誉は、自分のために多くの犠牲を払ってきてくれた父と母のもの」と、感涙したバレンズエラ。16戦目での戴冠も、2連敗を乗り越えてきた分、喜びはひとしおだったに違いない。2018年、19歳のプロデビューからベナビデス一家のチームで過ごしてきた無敗ホープは、2022年4月に元世界王者フランシスコ・バルガス(メキシコ)を初回で仕留め、ライト級で世界ランク入りを果たした後に、試練を味わった。代役エドウィン・ドス・サントス(ドミニカ共和国)にKOされ、クリス・コルバート(アメリカ)にはダウンを奪いながら僅差判定を失い、2連敗。再起にあたり、環境を変えた。家族のように過ごしてきたベナビデス家の元を離れ、ロベルト・ガルシアの門を叩いて昨年末、コルバートを6回に右フックでKOしてリベンジ。今回はガルシアとのコンビ2戦目だった。これまでの好戦スタイルとは違う美しいボクシングで戴冠を果たした25歳の新チャンピオンに、クルスは「正式に再戦を要求」した。

2連敗から立ち上がり、世界王座に到達した25歳バレンズエラ(Mark Robinson Matchroom Boxing)

WBA世界ライトヘビー級王座決定戦12回戦

〇 デビッド・モレル(キューバ) WBA世界スーパーミドル級王者 11戦11勝(9KO)

● ラドボジェ・カラジッチ(アメリカ)WBAライトヘビー級4位 32戦29勝(21KO)3敗

――判定3-0(117-111、117-111、118-110)――

※モレルが空位の正規王座を獲得

転級初戦で世界2階級制覇。モレルはカラジッチを倒しきれずも勝利を喜んだ(Mark Robinson Matchroom Boxing)

 スーパーミドル級で望む試合がどうしても決まらないキューバ人サウスポー、モレルがライトヘビー級に上げて、ドミトリー・ビボルがスーパー王座に君臨するWBAの下位王座を獲得した。しかし、この戦いがいわば“テストマッチ”。7ポンド(3.1キロ)の階級差は感じたようだ。「違いは感じたね。7ポンド重いんだから。それにいい相手だった。この階級の選手はみんな強いし、それが嬉しい」。試合後、素直に認めたとおり。2019年5月にIBF王者アルトゥール・ベテルビエフ(ロシア)に挑戦した(5回KO負け)経験を持つ長身のセルビア系ラドボジェ・カラジッチを追い続けたものの、連続KOは7で途切れた。

 序盤、モレルは勇んでカラジッチを追いかけた。長身191cmからジャブを出すカラジッチの長い距離を破って、3回にはコーナーに詰める。5回あたりにはより強い左を連発。はっきりと倒したい意思がみえる。しかし、丹念にボクシングを続けて決定打を避けてきたカラジッチが打ち下ろしの右ストレートを出し始めると、モレルの元気がなくなった。8回、モレルはもう一度、ピッチを上げて右フックに左ストレート、右アッパーと強振を繋いでみせる。カラジッチはそこへ右ストレート、右アッパーを差し込んだ。もっと強いパンチを知っているのだ。それは下の階級から上がってきた相手と戦う時のアドバンテージだろう。9回からカラジッチのカウンターが、コンスタントに入った。11回には右でモレルのアゴを跳ね上げる場面もあった。が、下がりながらのパンチで、それらがモレルの前進を止めることもなかった。最終回はモレルが左ボディを効かせ、カラジッチが耐えるうちに終了のゴングが鳴った。

 2階級制覇に成功したモレルは、「今日は勝ててうれしい。この階級にはベナビデスがいるね。彼はブギーマン(怪物)と言われているけれど、自分がベストだと証明するために彼のような相手と戦いたい」と、意欲的だ。

○…ヘビー級12回戦。薬物違反複数の問題児ジャレル・ミラー(アメリカ)を迎えた元世界3団体統一チャンピオンのアンディ・ルイス(アメリカ)の2年ぶりのリングは、地元カリフォルニアながら厳しい内容になった。ルイス124キロ、ミラー138キロ。14キロの体重差があるミラーに、ルイスはクイックなコンビネーションから右強振で先手をとりに行く。実戦は2022年9月のルイス・オルティス(キューバ)戦以来でも、「試合から遠ざかっていたがジムで練習はしていた。もう一度世界王座を獲りたい」と言うように、動きは軽やかだ。しかし、巨漢ミラーのパンチは迫力が半端でない。3回に“問題児”がギアを上げると、ルイスは下がり始め、5回にはミラーのペースになった。重そうなパンチに打たれて疲れ、重い体に圧されて疲れ、元3団体王者の状況は悪くなる。が、ルイスが猛攻に耐え、バックステップを踏みながらカウンターを狙い続けて粘るうちにラウンドは進み、ミラーも疲れてきた。どちらも決定打のないまま、フルラウンドが終了。採点が読み上げられ、ジャッジ一者が116対112でミラーを支持したものの、残る二者が114対114でドローとアナウンスされると、大きなブーイングが起きた。黒星を免れたルイスは、38戦35勝(22KO)2敗1分。「もう一度やろう」と再戦を望んだが、「300ポンドの人間が向かってくるんだから大変さ。5回から右手が痛くなって集中できなかった」と言って変形した右手を見せており、またブランクは長くなりそう。昨年末に敵地イギリスでダニエル・デュボアに敗れて以来の再起戦だったミラーは、29戦26勝(22KO)1敗2分。「勝つために十分なことをしたのに…判定を盗まれた」と、ビッグベイビーは悲しそうだった。

ドローに終わり、再戦を希望するも右手負傷を明かしたルイス(Mark Robinson Matchroom Boxing)

○…どの階級もホープからコンテンダーへの壁は厚いもの。ヘビー級はことさらだろう。トップランク社が手塩にかける無敗ホープ、ジャレッド・アンダーソン(アメリカ)が経験豊富な32歳、マーティン・バコレ(コンゴ)に5回2分7秒でストップされた。主要4団体すべてのランキングに名を連ねるアンダーソンはファイトウィーク、自信満々の笑みを浮かべていたものだ。昨夏には元世界王者チャールズ・マーティン(アメリカ)との10回戦にも大差判定勝ち。入念なマッチメイクで着実に階段を上っていたはずだが、バコレは「本物」だった。負けたのは6年前のマイケル・ハンター(アメリカ)戦のみ。肩の負傷を抱えてのものだ。クルーザー級の元世界王者イルンガ・マカブを実兄にもち、カルロス・タカム(フランス)にトニー・ヨカ(フランス)、セルゲイ・クズミン(ロシア)、マリウス・ワフ(ポーランド)……世界に手をかける大男たちの争いをくぐり抜けてきている。そしてアンダーソンとは体も違った。身長198センチ、体重129キロ、いわゆる現行トップクラスの体格をもつバコレの前では、身長193センチ、体重114キロのアンダーソンはか細く見えてしまった。試合が始まると、そんな巨体から素早いパンチを放つバコレが早々と主導権を握った。初回終盤、サウスポーに構えて入ってきたアンダーソンを右アッパーで迎え撃ち、すかさず左右をフォローしてダウンを奪う。ゴングに救われたアンダーソンは、2回になっても怯まず攻めて出た。右構えにもどして懸命にボディを狙う。しかし、もう体が違い過ぎた。4回、バコレの右ストレート、右アッパーで体が揺れ、ダメージを溜めていきながら後ろに引かないアンダーソンに、5回、バコレの左アッパーが突き刺さる。一撃でダウン。さらに、右ストレートでもダウン。それでも試合を続行させようとするジェリー・カントゥ主審を見て、アンダーソン陣営がたまらず白旗を振った。ストップの時間は5回2分55秒。「ありがとうございました。私は言ったことを実行しました。ハンターとのリマッチがしたい」と語ったバコレは22戦21勝(16KO)1敗。主要4団体の世界ランクに入り、WBAでは1位にいる。世界初挑戦の声は、いつかかるのだろう。初黒星のアンダーソンは、18戦17勝(15KO)1敗。リング上で気丈にインタビューに応じた。「試合中いくつかミステイクがあった。自分の責任。勝つ時もあれば負ける時もある。バコレには脱帽する。彼は彼のすべきことをやったんだ。負けた俺はジムに戻るだけだ」。

世界ヘビー級の壁の厚みを感じさせたバコレ(右) (Mark Robinson Matchroom Boxing)

○…DAZNとESPNで放映されたPPVのトップバッターは、キューバの至宝アンディ・クルス(4-0,2KO)が務めた。タフな中堅アントニオ・モラン(メキシコ, 30-7-1, 21KOs)とのライト級10回戦。予想のとおり、モランが振って追いかけて、クルスがかわしてリターンする。モランがよく動き、クルスは立ち上がり、意外とパンチが当たらないものだと感じたかもしれない。2回もモランが長い距離をしっかり生かしてプレスをかけ、ボディブローにもつなげていく。しかし次第にクルスのパンチがモランの出端をとらえ出し、3回にはクルスがペース掌握。お手本のようなコンビネーションにボディへのカウンターで、モランの動きを鈍らせた。それでもそのまま後退しないのが、“タフガイ”モランである。リズムに乗るクルスに左フックを見舞ってたたらを踏ませ、再び体格の利を生かして圧し返した。ところが6回終盤、モランが急激に失速。7回、クルスが右クリーンヒットから連打でモランをロープ際に追うと、レフェリーはロープダウンをとる。そのカウント中に足がもつれたモランを見て、レフェリーが試合終了を宣言した。時間は7回2分59秒だった。1年前のプロデビュー戦で獲得したIBFインターナショナル・ライト級王座の3度目の防衛に成功したクルスはこれで4戦全勝2KO。モランは38戦30勝(21KO)7敗1分。

五輪連覇のクルスは、タフなモランを詰め切った(Mark Robinson Matchroom Boxing)

○…第2試合のスーパーミドル級10回戦では、テレンス・クロフォードのジム『B&Bアカデミー』を取り仕切るスティーブン・ネルソン(アメリカ)がマルコス・バスケス(メキシコ)を5回50秒でストップした。サウスポーのメキシカンに圧力をかけながら1ラウンドを偵察に費やした後、ネルソンは2回からコンビネーションのギアを上げ、右ボディストレートを突き刺した。3回にはコーナーに詰めて連打をまとめ、右ストレートでノックダウン。ラウンド終了間際にも、上下攻撃から右アッパーを打ち上げ、バスケスをひざまずかせる。これはスリップの裁定だったが、ワンサイドの展開は変わらない。4回、反撃の姿勢をみせたバスケスを、5回、右フックでフロアへ落とし、戦意も奪い取った。WBOランク入りを果たしていた4年前にアキレス腱を断裂。2年以上のブランクを越え、3連勝のネルソンは、これで20戦全勝16KO。世界ランク復帰が待たれる36歳。バスケスは22戦20勝(10KO)1敗1分。

怪我から復帰3連勝のネルソン。チーム・クロフォードのコスチュームをデザイン。このトランクスも(Mark Robinson Matchroom Boxing)

○…記念すべきリヤド・シーズン第一弾のオープニングバウトは、ウェルター級6回戦。サウジアラビアを代表しリヤドからやってきたザヤド・アルマーユフがサウスポーのポーランド人ミカル・ビュリクと戦ったが、フルラウンド引き分けに終わった。スタートから積極的に左を狙ったビュリクに対し、偵察に時間をかけたアルマーユフは右ヒットからペースを上げたが、どちらも防御に長けてクリーンヒットが少ないまま時間が過ぎた。採点はジャッジ1者が59対55でアルマーユフを支持したが、残る2者は57対57という1-0だった。アルマーユフは7戦6勝(11KO)1分。ビュリクは14戦6勝(2KO)7敗1分。

興行のトップバッターはサウジの数少ないプロボクサー、アルマーユフ(左)(Mark Robinson Matchroom Boxing)

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