一手二手先読みした穴口。距離を詰めるにとどまった梅津

☆8月30日/東京・後楽園ホール
井上尚弥バンタム級4団体統一記念杯バンタム級モンスタートーナメント準決勝
バンタム級8回戦
○穴口 一輝(真正)日本12位
●梅津 奨利(三谷大和スポーツ)日本4位
判定3-0(80対72、80対72、80対72)
アウトボクシングをベースに、巧さが光る穴口一輝(真正)。強打に技術も身に着けた、梅津奨利(三谷大和スポーツ)。トーナメント準決勝は、穴口が技術で翻弄し、フルマークの判定勝利。12月、同日V3を果たした日本王者・堤聖也(角海老宝石)への挑戦が決定した。
文_本間 暁 写真_山口裕朗
Text by Akira Homma/Photos by Hiroaki Finito Yamaguchi
穴口が距離を支配してリードした
上体を柔らかく使って、中に体を入れる、引くを繰り返し、サウスポー穴口の右サイドを取って左ボディー、中をとっては右ボディー。このショートブローを決めた梅津は、左構えにスイッチして、右リードを突いていくトリッキーさも披露した。が、左アッパーから左ストレートと、大先輩・長谷川穂積を彷彿とさせるコンビネーションも見せながら距離を築く穴口に、次第に置き去りにされていく。
基本的に上体を立てて長い距離を駆使する穴口は、右リードを突きながらも、そのまま右腕を伸ばして距離を演出。かつ、右グローブで梅津のガード上を押さえて行く手を阻み、右グローブで梅津の目隠しもする。これらが気になる梅津は、気を取られているところへ左ストレートをヒットされる。リターンブローを狙えば、自身の左サイドへ回られてしまい、そこから右フック、左アッパーを食らう。梅津は常に1個ずつ動きに後れをとっていき、穴口は一手二手先まで進んで、行動を運んでいく。
穴口は、梅津の挙動全体を悠然と観察していた。だから、梅津の“その次”の動きを予測することができ、先手でも後手でも自在に制していった。

梅津の技術的向上が裏目に出てしまった
連続KOでハードパンチャーとしてならしてきた梅津は、キャリアを重ねることで冷静に組み立ててハードヒットを決める術を心得てきたが、だからこそ、「当てられない距離」「当てづらいタイミング」を知ってしまい、手を出せない状況を作られたと同時に、自らも作ってしまった。
以後、梅津は「距離を潰す」ことにのみ頭を奪われてしまったが、そこにハメ込んだのは穴口の技だった。
ガッチリと主導権を握り、距離やテンポに至るまで完全掌握した穴口は、さらなる“優位”を印象づけるため、6ラウンドに入ると自ら足を止めてみせた。ハイテンポのボクシングに、いったん息をつかせるという目的もあったろうが、接近戦でも凌駕してしまえば、梅津を落とせると踏んだのだろう。前戦で、内構拳斗(横浜光)のド迫力連打を封じてみせた自信もあったはずだ。
が、梅津は、望む距離を穴口に用意されたものの、手を出せなかった。穴口の左右アッパーが邪魔で、それを防ぐことに気を奪われてしまったためだ。
しかし穴口は、ほんのわずか梅津へと差し出してあげた距離を放棄。ふたたび距離と空間を操るボクシングへと戻り、「針の穴ほどの隙も見せない」を実践した。
完璧な勝利を披露した穴口は、12月26日の決勝兼日本タイトルマッチに歩を進めた。
オールラウンドに何でもこなせる上、覚悟を決めての泥臭いスタイルもいとわないチャンピオン堤聖也と、華麗なボクシングを続ける穴口。このサウスポー対決も俄然楽しみになってきた。
