REVIEW8.30 松本圭佑vs.リドワン・オイコラ

“間”を埋めるジャブを筆頭に、鮮やかだった松本圭佑“三種の左”

松本の速くて鋭い左ジャブ

☆8月30日/東京・後楽園ホール
日本フェザー級タイトルマッチ&WBOアジアパシフィック同級王座決定戦12回戦
松本 圭佑(大橋)日本チャンピオン、WBO・AP1位
リドワン・オイコラ(平仲ボクシングスクール)日本1位
判定3-0(117対111、118対110、119対109)

 元王者・佐川遼(三迫)を破って日本王座を獲得した松本圭佑(大橋)が、ナイジェリア人の強豪リドワン・オイコラ(平仲ボクシングスクール)を迎えた一戦。技術戦の末に松本が快勝をおさめ、日本王座初防衛とともに、アジア王座も獲得した。

文_本間 暁 写真_山口裕朗
Text by Akira Homma/Photos by Hiroaki Finito Yamaguchi

多彩な左でオイコラの右を封じた松本

 研きに磨き上げてきた松本の左ブローが、巧者オイコラを封じ込めた。

 ジャブで距離を計測し、リズムを取り、オイコラを止める。スピードが速いのはもちろんのこと、左足と上体の微動作で1フェイントを入れてのそれは、オイコラの感覚を十分に狂わせて、攻め時を見失わせた。

 松本は、このジャブを大いなる起点とし、同じタイミングで軌道を若干変えたフックも盛り込んでいく。これが、オイコラの右ガードの外側に巻き込まれ、内側に滑り込んでいく。出所、出すタイミング、途中までの軌道と、ジャブと何ら変わらないそれもまた、オイコラを殻に閉じ込めていった。

オイコラの右をかわし、左フックを合わせる松本

 さらに松本は、左ジャブ、フックのコンビネーションに加えて、左ボディーブローも混ぜ込んでいく。これもまた、流れるように続けて打たれるために、オイコラは反応できない。
 松本のこの“三種の左”によって、オイコラの右はアゴとボディーを守ることに専念せざるをえなくなってしまい、特に前半は打てない状態に追い込まれていた。

 多彩な左で試合を完全に形成した松本は、左から右ストレートへと徐々につないでいき、オイコラにロープを背負わせる場面も増えていった。
 右を使えないオイコラは、松本の右、あるいは左フックに自身の左フックを合わせるカウンター狙いを始める。攻めながら松本もそれを察知して、小さなステップバックとスウェーバックでかわし、すかさず攻撃を続けていく。打った腕の引き戻し、パンチを出していない側の腕とグローブによるしっかりとしたガード、カバー。ジャブを打った左腕が流れ、上体も突っ込んでしまい、そこを松本の右に狙われたオイコラとの差が目についた。

オイコラの反撃を松本は冷静にしのいだ

 立ち上がりから中盤までの流れをみれば、松本がほぼ完璧に支配していた。そのままダウン、もしくはKOまで結びつけたい。松本にはもちろん、そういう想いが芽生えていただろう。しかし、ディフェンシブになったオイコラは、ガードの上手さと独特の距離感を備えていて、松本のハードヒットを許さなかった。目立たなかったものの小さなリターンブローも松本を邪魔していた。

左フックのカウンターを狙ったオイコラだが、松本が右ガードで寸断

 松本は、オイコラの左フックカウンターを警戒してか、長く強い右ストレートを出さなくなっていった。その代わり、コンパクトに打つショートストレートを多用した。小さく打つからこそ、手数も多く出せ、連打も利く。オイコラもカウンターを狙えない。

 最終盤となった11ラウンド、それまでほぼ封印していた右を、オイコラがようやく使い始めた。松本の連打の間隙を読んで上下に打ち込み、松本の動きを一瞬止めた。
 が、松本はクリンチや距離を取るボクシングで嫌な流れを冷静に切る。打たれれば、必ず打ち返す強気の持ち主だが、展開やリズムをラウンド中にしっかりと読むクールさが備わっていた。

 強さ以上に巧さを持つオイコラを、技術でも完璧に上回ってみせた松本。特に“間”を埋め、詰めていく左ジャブは、今後も大いなる武器として躍動するはずだ。

日本王座初防衛、WBOアジア王座を獲得した松本をオイコラが祝福

 

 

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