REVIEW 11.16 ナバレッテvsコンセイサン、スティーブンソンvsデロスサントス

コンセイサン大奮闘でナバレッテドロー防衛に。シャクールが世界3階級制覇。

大熱闘を終えた二人は称え合う Photo by Mikey Williams/Top Rank

  11月16日の木曜日、F1グランプリを土曜日に控えるアメリカ・ネバダ州ラスベガス。T-Mobileアリーナで行われたダブル世界戦で、WBO世界スーパーフェザー級王者エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)がドローながら2度目の防衛。11位の挑戦者ロブソン・コンセイサン(ブラジル)が2度のダウンにも挫けず大奮闘をみせた。一方で、WBC世界ライト級王座決定戦は、想像以上にテクニカルな駆け引きに終始した。盛大なブーイングの中、1位のシャクール・スティーブンソン(アメリカ)が6位のエドウィン・デロスサントス(ドミニカ共和国)を僅差3-0で退け、世界3階級制覇に成功。「今日はいいパフォーマンスじゃなかった」と真摯に認めている。

Text_Yuriko Miyata,  Photos_Mikey Williams/Top Rank

WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦

「ロブソンはすごいファイターだ」とチャンピオンは称えた

△ エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)チャンピオン 40戦38勝(31KO)1敗1分

△ ロブソン・コンセイサン(ブラジル)挑戦者11位 21戦17勝(8KO)2敗1分1NC

[判定1-0 114対112、113対113×2 ※ナバレッテが2度目の防衛に成功]

ナバレッテは4回と7回にダウンを奪う Photo by Mikey Williams/Top Rank

 世界3階級制覇者エマヌエル・ナバレッテの攻めの迫力は変わらずも、世界挑戦3度目のチャンスに賭けるリオ五輪金メダリスト、ロブソン・コンセイサンの執念は凄まじかった。開始からリング中央に陣取ってナバレッテの打ち終わりにリターンを狙った。ナバレッテの持ち味である上下ロングアッパー、右ストレート、風車のようなコンビネーションの回転があがっても、コンセイサンはそこをかいくぐって攻めに行くのだ。

 しかし、与えるダメージの大きさは、ナバレッテが優る。その攻撃がさらに熱を帯びた4回に左アッパーから右を追加し、ダウンを奪った。反撃を仕掛けるコンセイサンを、7回には右ボディフックで再びフロアに落としてみせる。それでも、コンセイサンは立ち上がった。「アマチュアでも3度目のオリンピックで金メダルを獲ったんだ。プロでも3度目で」。その決意のとおり勝利だけを目指してナバレッテに立ち向かい、9回には左フックから右ストレート、ボディとつないで盛り返す。が、ベストラウンドだった9回の最後にはナバレッテの強振につかまりかけた。10回のあたまにドクターチェックで続行を許されたブラジル人の反撃は、もう感動的なほどに懸命だ。11回にはナバレッテの左ボディが効いて大ピンチ。全力を使い果たした様子でも、最終回は開始から左ロングジャブを連射して獲りに行った。ともに引かぬ戦いは、スタンディングオベーションのうちに終了のゴングを聞いた。

3度目の正直にかけるコンセイサンは戦い続けた Photo by Mikey Williams/Top Rank

 毎ラウンド、グローブタッチで始まった戦いは、終わったあとも互いへの敬意に満ちた。ナバレッテは、「判定は真っ当だ。ハートをみせたロブソンはすごいファイター。我々は言ったとおりファンにいいものを見せられた。そして私は最低限、ベルトを持って帰れてよかった。自分が決められるわけじゃないけれど、再戦はするに値すると思う」と語った。

 見事な通訳でもあるインタビュアーのバーナード・オスナを挟んで隣り合うコンセイサンは、家業“ヴァケロ(牛飼い)”がニックネームのナバレッテから贈られたカウボーイハットをかぶってその言葉を聞き、笑みに憂いをにじませて答えた。「大変な戦いだった。彼はとても強い。難しい戦いだった。でも私は、自分が今日何をしたのかわかっている。いい戦いだった。再戦が決まったら、彼も私もより鍛えて、よりいい試合になると思うよ」。2021年9月に当時WBCスーパーフェザー級王者だったオスカル・バルデス(メキシコ)に敗れた時は、観衆から大きな支持を受けた。その1年後、体重超過したスティーブンソンとフルラウンド戦ったが、空位になったWBC・WBO王座はつかめず。そして今回。ナバレッテにドロー。ブラジル初のボクシング金メダリストは、戦い続ける。

WBC世界ライト級王座決定戦

シャクール、決意をもって勝ちに徹する

今日はいいパフォーマンスじゃなかった、と認めたスティーブンソン Photo by Mikey Williams/Top Rank

〇 シャクール・スティーブンソン(アメリカ) 1位 21戦全勝10KO

● エドウィン・デロスサントス(ドミニカ共和国)6位 18戦16勝(14KO)2敗

[判定3-0 115対113、116対112×2 ※スティーブンソンがタイトル獲得、世界3階級制覇に成功]

 ナバレッテとコンセイサンの熱闘のあとだからよけいに観客を退屈させてしまったのかもしれない。1位スティーブンソンと2位のフランク・マーティン(アメリカ)との交渉が成立せず、6位のデロスサントスが代わりに立った、このサウスポー同士の戦いは、向き合った二人の間にはものすごく細かい駆け引きがあったのだろう。が、傍目にはほぼ無風のフルラウンド。そしてその技術戦を主導していたスティーブンソンの勝利で間違いない。

 あとになってみれば出だしには、アクションがあった。「みな世界王者になりたいんだ。このチャンスにためらいなく手を挙げた」という強打のドミニカ人、デロスサントスが長い右ジャブ連射でまっすぐ攻め入る。スティーブンソンは下がらずそこへショートカウンターを狙った。だが、クリンチで互いにフォローを封じ、レフェリーに仕切り直されてからは、見合う時間が多くなる。2回には早くも、ブーイングが起きた。

 間を探り合う空間で、断続的でもスティーブンソンの鋭いジャブが刺さった。デロスサントスはその右ジャブに左を合わせようと試みる。しかし、ドミニカ人がそうして強拳を振るえば、スティーブンソンは遠く後ろへジャンプしたり、逆にしがみついたり、なりふりかまわず全力で危険回避に走った。インターバル中、スクリーンでリプレイする場面もない。どちらも慎重で、リング内が無音になるほどに、ブーイングのボリュームは上がっていった。ほとんどジャブしか使わなかったスティーブンソンが、10回に入ってついに左ストレートを使い出し、11回にはデロスサントスを誘い込んで左ダブル。最終回にもクイックのワンツーを放った。とはいえ、数は数えるほど。観客のフラストレーションは収まらないまま、試合は終了した。

ほとんど左を使わなかった理由は… Photo by Mikey Williams/Top Rank

 判官贔屓の観客を背にデロスサントスは鬱憤を吐き出した。「彼は陸上競技の試合をしていたのか。ちっともファイトしなかった。彼がほかの選手と対戦した時のように止まって戦おうとしなかったのは、私を怖れたから、私が過去の対戦相手より高いレベルにあったからだと思う。私は私の仕事をした。彼は負けないために来た。彼はタイトルを贈られたが、人々にとっては私が勝者」。

 それにしても。スティーブンソンがいかにディフェンス志向でも、ここまで危険回避を徹底した戦いぶりはいつ以来だろう。いや過去一番じゃないだろうか。世界3階級制覇者となった26歳は、対戦者がボクシングを熟知したよい選手であったことを認めた上で、自分のこの戦いについて真摯に語った。

「今日は僕を祝福しないで。今日はいいパフォーマンスじゃなかった。自分がいい調子じゃないことはわかっていたんだ。だから、リングに立ってもそのままなら、今日は勝つためだけに戦うと決めていたんだ」

 4月8日に地元ニューアークで吉野修一郎(三迫)を6回TKOに退け、WBCライト級挑戦権を手に入れてから、すぐにジムワークを再開したというスティーブンソン。試合までの長い過程で今日使わなかった左に問題が生じていたかという問いには、イェスともノーとも言わなかった。

「言い訳はしたくない。それに関しては何もいいたくない。どんなボクサーにもあること。ただ今日は調子がよくなかっただけ。本当の僕は今日よりずっといいボクサーだってことだけは間違いない」 

 そんな日もある。勝つことが一番大事。そう決めて戦い切った新チャンピオンは、前を向く。ライト級で待つ強敵との対戦は、実現するだろうか。

<アンダーカード>

☆スーパーミドル級6回戦は、左右スイッチするルーカス・デ・アブルー(ブラジル)の様子を見ていたジオバニ・サンチオト(イタリア)が3回にワンツーから左フックをジャストミートさせてダウンを奪い、再開後に右ストレートでダウンを追加。レフェリーが試合をストップした。TKO3回2分06秒。サンチオトはこれで9戦全勝8KO。4連敗のアブルーは19戦14勝(11KO)5敗。

☆スーパーライト級6回戦は、アメリカ初登場のヨーロッパ人同士という珍しいカード。これもF1ウィークならでは? ロングジャブでスタートしたモナコ唯一のプロボクサー、“プリンス・オブ・モナコ”ヒューゴ・ミカレフは、懐を狙うセルジオ・オバダイ(オーストリア)を右ストレート、右アッパーで迎え撃つ。3回から打ち合いに応じてヒットを重ね、4回終了後にオバダイが棄権。戦績を9戦9勝2KOに伸ばし、幼馴染であるというF1レーサー、シャルル・ルクレールの祝福を受けた。オバダイは9戦6勝(3KO)2敗1分。

週末のF1グランプリに出場するシャルル・ルクレールとは幼馴染だというPhoto by Mikey Williams/Top Rank

☆ライト級6回戦は、鮮やかなKOでフィニッシュ。デビューちょうど2年の19歳、アブドゥラー・メイソン(アメリカ)は初回、サウスポースタンスからホセ・カルデナス(アメリカ)に左ショートをあわせてダウンを奪う。そして2回にクイックのワンツーをジャストミート。カルデナスを吹っ飛ばすと、即座にレフェリーが試合を止めた。2回1分55秒KO勝ちで、11戦全勝9KO。ハイピッチで勝利重ねるホープにこれからも注目したい。カルデナスは9戦7勝(5KO)2敗。

19歳のライト級ホープ、メイソンに注目しようPhoto by Mikey Williams/Top Rank

☆無敗同士のヘビー級6回戦。仕掛けるスティーブン・トーレス(アメリカ)に、サウスポーのジャクソン・マレイ(オーストラリア)が長い左ストレートを狙う。長いペース争いから3回開始後にマレイが右ジャブでトーレスをぐらつかせ、ラウンド終盤には右フックを引っ掛けてトーレスをフロアへ送り、カウントを聞かせた。その後もマレイが単発ながら何度かトーレスのアゴを跳ね上げて、6ラウンズ終了。採点は三者とも60対53で、マレイがアメリカデビューを白星で飾った。戦績は6戦6勝(4KO)。トーレスは8戦6勝(6KO)1敗1分。

☆ライト級6回戦に、フェルナンド・バルガスの三男エミリアノ・バルガスが登場。スタートから鋭い左ジャブ、右ストレートでブランドン・メンドサ(アメリカ)を追い込み、初回中盤、コーナーで速いワンツーを突き刺し、ダウンを奪う。そして2回、右ストレートでメンドサをなぎ倒してレフェリーストップを呼び込んだ。TKO2回57秒。バルガス三兄弟の中で唯一トップランクと契約するエミリアノは、8戦8勝7KO。メンドサは3連敗、9戦6勝(6KO)3敗。

3兄弟の末弟エミリアノはトップランク傘下でキャリアを積む Photo by Mikey Williams/Top Rank

☆ミドル級8回戦では、無敗の元東京五輪アメリカ代表トロイ・イスリーが、経験で上回るサウスポーファイター、ブラディミール・エルナンデス(メキシコ)と対戦。クリーンヒットの数でジャッジにアピールしたものの、終盤はベテランの前進を持て余し、ヒットも許す苦しい戦いに。採点は三者とも77対75で支持を受けたが、会場はブーイングも聞こえた。イスリーは11戦11勝4KO。エルナンデスは20戦14勝(6KO)6敗。元世界王者ジュリアン・ウィリアムス(アメリカ)への大金星から2年が経った。

☆地元ラスベガス・ベース同士のバンタム級8回戦は、WBCユース王座がかかる。フロイド・‟キャッシュフロー“・ディアスマックス・オルネラスに対し、様子見の初回を経て2回と3回にダウンを奪って判定勝ち。採点に逸るうちに被弾もあり、採点は77対73、78対72と、74対76の2-1だった。村田昴(帝拳)ともスパーリングしている20歳のディアスは、10戦全勝3KO。粘り強いオルネラスは18戦15勝(5KO)2敗1分。

☆無敗ウェルター級同士のWBOインターナショナル王座決定戦。トップランクとの契約3戦目で初KOを目指すブライアン・ノーマン(アメリカ)が開始から積極的に攻撃を仕掛けていくが、長身クイントン・ランドール(アメリカ)のディフェンシブなボクシングの前でコンビネーションがなかなかつながらない。終盤は一人のブーイングがブーイングを呼び、7回には客席から「退屈だ」という言葉も聞こえてきた。僅差のラウンドをつみあげたノーマンが、99対91×2、97対93の3-0で勝利。

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