新鋭パチェコがコンテンダーの力を証明

Text_Yuriko Miyata Photos_ Ed Mulholland/Matchroom, Melina Pizano/Matchroom
カリフォルニア州イングルウッド。伝統会場フォーラムの近くに完成した巨大なSo-Fiスタジアム内YouTubeシアターで行われたマッチルーム興行は、全6試合。
地元ロサンゼルスで初めてメインを務めた22歳のスーパーミドル級世界ランカー、ディエゴ・パチェコ(20-0, 17KOs)は、その大役を見事に果たした。エディ・ハーンが「完璧なマッチメイクであり、そこで彼の能力をみることができた」と大喜びするのも納得だ。

この2023年はイギリス、メキシコでのマッチルーム興行でメインに抜擢され、今回は満を持しての“ホームカミング”。ロサンゼルスでのリング自体ちょうど4年ぶりで、対戦相手も初めて、世界挑戦経験者であるマルセロ・コセレス(アルゼンチン、32-5-1, 18KOs)が選ばれた。2年前すでに世界ランクにいた豪腕新鋭エドガー・バーランガ(アメリカ)も苦しめたベテランだ。主要4団体すべての世界ランクを順調に上がるパチェコに課された重要な“テスト”。意気込んで硬くなってもしかるべきそんな状況で、若者は冷静に丁寧にタフなベテランと向き合った。長躯193cmの重心を落とし、長いジャブで先手をとる。右を振って懐を狙うコセレスに、4回には右アッパーを合わせた。
4年前にWBO王者ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)を大いに苦しめているアルゼンチン人は、その時の王者と同じ“アポロ・クリード”トランクスを身につけて、ずんずん前に出る。5回には左フックをパチェコの頬に叩きつけた。

パチェコは崩れない。同じ階級のWBC王者デビッド・ベナビデスのチームに参加し、兄弟の父ホセに師事して3年。信頼する師の「クレイジーになるな」という師の言葉を守った。ジャブで距離を作り直す。左アッパーとともにコセレスの頭がアゴに当たっても感情的になる様子はなかった。8回、右カウンタ―からコセレスをロープに詰めて連打。観客を総立ちにさせ、迎えた9回。出てきたアルゼンチン人に右アッパーをカウンター。フォローアップでロープに追い込み、強烈な右アッパーでアゴを跳ね上げた。フロアに落ちたコセレスはそのまま、諦めたような表情でテンカウントを聞いた。9回2分53秒。

保持するWBC米国王座3度目、WBOインターナショナル王座2度目の防衛を果たしたパチェコは、「キャリアのこの段階でトップレベルを知る選手をストップできて満足。よい経験になった。スペシャルなボクサーであると、みんな少しずつ認識してきてくれているんじゃないかな。より大きなことが待つ2024年に備えたい。ボクシングしか、したいことがないんだから、すぐにジムに戻るよ」と語った。2月には父になるという。
“新しいスーパースター”と期待を膨らませるハーンは、来年も「最低でも年3戦」を約束。傘下に迎えたバーランガとの新世代世界ランカー対決が待望されていることは、十分承知している。

セミファイナルのWBA女子世界スーパーフライ級タイトルマッチでは、王座交代。挑戦者エリカ・クルス(メキシコ)がマジェリン・リバス(ベネズエラ)に判定2-0(97-93, 98-92, 95-95)でタイトルを奪い、WBAフェザー級に続く世界2階級制覇を達成した。
左の猛ファイター、クルスの前進が止まらなかった。イスマエル・サラスに師事するスタイリッシュなアスリート、リバスはその入り際を正確な右クロス、左アッパーで叩き、身体を翻してフォローもする。が、クルスは構わず頭を下げて押し入ってくると、クリンチで封じるほかない。後半から終盤に向かい、クルスの猛烈な手数が目を引いたのもたしかだった。
採点の難しい戦いも、攻め続けたクルスは判定を聞く前から肩車の上で勝利をアピールした。アマンダ・セラノ(プエルトリコ)とのフェザー級4団体統一戦に敗れて無冠となってから9ヵ月、再起2戦目で2階級目を制したクルスは、19戦17勝(3KO)2敗。「100%の準備をしてきた。チームを引っ張ってくれる父に感謝したい。対戦相手のリバスにも。素晴らしいカウンターパンチャーだった。でも私は、ボクシングは手を出すことだと心得ている」。世界2階級制覇者のリバスは25戦17勝(11KO)5敗3分。


空位のWBAインターナショナル王座がかかったバンタム級10回戦は、波乱の幕切れに。元WBA世界スーパーフライ級チャンピオンのカリド・ヤファイ(イギリス、 27-2, 15KOs)が、今回が初10回戦だったジョナサン・ロドリゲス(アメリカ、17-1-1, 7KOs)と対戦。元王者の身体はまだ温まっていなかったのだろう。リングをサークルするうちに、ロドリゲスがフェイントを入れて放った右オーバーハンドに左頬を直撃された。そしてこのダウンで受けたダメージから、抜けだすことはできなかった。再開後に右クロスでなぎ倒され2度目のカウントを聞き、さらに被弾したところで、レフェリーに救い出された。開始2分17秒だった。「調子はよかったけれど、錆びはあったね」。昨年2月、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)に9回TKOに敗れ、WBAスーパーフライ級王座を失い、9ヵ月後に再起したが、それ以来1年ぶりの実戦だった。金星を挙げた24歳ロドリゲスは、「こんな結果を想像していたわけじゃないけれど、一生懸命準備してきた。元世界王者になった人と対戦するのだから、とにかく集中していた」と。バンタム級に新しいコンテンダーの誕生である。


DAZN本編オープナーは、スーパーフェザー級8回戦。熱い好戦スタイルにたくさんのファンを引き連れたマーク・カストロ(アメリカ)が、タフなチリ人ゴンザロ・フェンザリダとの打ち合いをリードする。5回 一歩引いて距離が合った右を何度もヒット。6回にボディブロー、7回にアッパーを混ぜて攻勢を強め、ロープ際でパンチをまとめ上げる。いつもストップが遅めのレイ・コロナ主審が割って入った時間は、7回2分31秒。カストロは11戦11勝(8KO)。フェンザリダは15戦12勝(3KO)3敗。

DAZNのBerofe the Bellは、第一試合からカバー。サウスポー同士のライト級4回戦は、全米アマ王者からマッチルームと契約したクリステック・バザルダ(アメリカ)のプロ3戦目。プロでは初めて地元ロサンゼルスのリングに立つバザルダは、185cmの長身から右ジャブ、ワンツーのタイミングや角度をさまざまに変えて、開始からペドロ・アンヘル・クルス(アメリカ)を圧倒する。そのテンポに慣れたクルスに3回は右フックを打たれたが、最終回、ワンツーを畳みかけてレフェリー・ストップを呼び込んだ。4回46秒、初KO勝ちをつかんだバザルダは3戦3勝(1KO)。クルスは7戦3勝(2KO)4敗。

続くスーパーフェザー級8回戦にも地元ホープが登場。21歳のサウスポー、ジェイレン・“スカイ”・ウォーカー(アメリカ)が懐深く構えて、ホルヘ・ビジャガス(メキシコ)を巧く迎え撃つ。エンジンがかかった2回。左でぐらついたビジャガスを逃がさなかった。すかさず左をフォローしてロープに詰め、連打。ラウンド残り10秒を切っていても、レフェリーにストップを決断させるに十分な詰め方だった。2回2分55秒KO勝ちのウォーカーは13戦12勝(10KO)1分。ビジャガスは16戦14勝(13KO)2敗。
