【INTERVIEW】世界2階級4団体統一戦直前!井上尚弥

PART3「人それぞれ違いや個性があるからおもしろい」

トレーニングの仕上げはロープスキッピング。高い集中力は決して途切れることがない

 WBC&WBOチャンピオン井上尚弥(大橋)とWBAスーパー&IBF王者マーロン・タパレス(フィリピン)による世界スーパーバンタム級4団体統一戦(12月26日・東京・有明アリーナ)まで、あと5日──。最終回となるPART3は、ボクシングにおける重要な要素のひとつ、「リズム」と「間」について。基本動作を最も大切にする自身のボクシングのみならず、自分以外の選手たちについても言及。出した結論は「だからボクシングはおもしろい」だった──。

インタビュー&構成_本間 暁  写真_山口裕朗
Interview by Akira Homma Photos by Hiroaki“Finito”Yamaguchi

 10月の2選手に代わり、11月下旬より、同じメキシコからクリスチャン・クルス(26歳=フェザー級、21勝11KO6敗1分)とホセ・サラス・レイジェス(21歳=スーパーバンタム級、14勝10KO)の両名がやってきて、スパーリング・パートナーを務めている。元IBF世界フェザー級王者の父(クリストバル)を持つクルスは左右両構えを巧みに操るファイター。若いレイジェスは距離を駆使する綺麗なボクサータイプ。井上はこの日、それぞれと4ラウンドのスパーリングを敢行。クルスと猛烈な打撃戦を繰り広げた後に、レイジェスとはフットワークを使った丁寧なボクシングを披露してくれた。本誌は約2時間のトレーニング後、ふたたびモンスターにアタックさせていただいた。

あくまでも照準は試合

井上 全然気を遣わないで、思ったことを遠慮なく言ってください(笑)。
──(笑)。ふたりとはいつも4ラウンドずつやってるんですか。
井上 いや、今日が初めてです。そんな気を遣わなくていいですよ。「今日の出来はどうだった」って率直に言ってもらっていいです。
──いやいや(笑)。
井上 まあ、こんな日もありますよ。
──タイプによって、やるボクシングを使い分けていますよね。最初に手合わせしたクルスがタパレスにタイプが似ています。
井上 そうですね。
──凄い肉弾戦でした。
井上 (小声で)そうっすね……。ちょっと今日は疲れも残ってて(と苦笑い)。
──いつもこの時期はこういう感じですか。
井上 いや、あまりないですけどね。
──でも、不本意な出来でも前ほど気にしないというか、「こんな日もあるさ」くらいな感じですよね。
井上 うん。そうっすね。
──そういう面でも“ゆとり”ができたというか。前はもう、いつでも完璧を求めすぎてガチガチになってた気がしますが。
井上 こういう日があっても気持ち的に乱れることはないですね。
──あくまでも「試合が本番だから」というような気持ちになってきましたか。
井上 「そこにしっかりと照準を合わせて」っていう感じです。
──そういうところですね。練習中はもちろんですが、練習外でもこの時期のジムにいる井上選手には、以前は近づけませんでしたから。
井上 ここからじゃないですかね。
──いや、でももうこの時期にはそういうオーラが強かったです。でも今は柔らかくなったというか、大らかになったというか。
井上 それはどうなんですかね。それがいいのかどうか。
──とても良いと思います。
井上 自然体でいるだけなんですけどね。

試合が迫ったジムでこんな表情を見せるのは、WBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)優勝以前には考えられなかった

同じ選手、同じボクシングじゃないからこそおもしろい

──前々から伺いたいと思っていたんですが、「リズム」とか「間」について、井上選手はどのように考えてますか。
井上 駆け引きの中で、常に「間」と「タイミング」をズラすことは考えてます。でもみんなそうなんじゃないですか。そこをみんな試行錯誤して。人それぞれやり方はあると思うんですが。
──人に言われてできるものでもないじゃないですか。実戦やミット打ちの中で培っていくという。
井上 人それぞれ、自分の「リズム」と「タイミング」と「間」があるじゃないですか。練習や試合をやっていく中で、自分なりに当てはめていくものだと思うので。人それぞれ違いとか個性があるからおもしろいわけで。
──ナチュラルでそういうタイミングを持ってる人もいるし、自分で意識してやっている人もいる。
井上 そうですね。でも、リズムや間をずらさない選手もいますよ。それイコール「やりやすい」選手になってくるんですが。いわゆる「正統派」。教科書どおりというか。でも、それにはそれの良いところがありますし。言ったら「センスのない人」がそれをカバーして、自分独特のリズムを作っていく。そういう個性的な選手もいるじゃないですか。自分の得意な距離と間とタイミングを、やりながら取得していって自分のボクシングを確立していく。それと同様で、自分も相手によってこういうボクシングをしようかなって考えてます。
──井上選手は土台やベースがきちんとあって、それがしっかりしているからこそ、テンポを速めたり遅らせたりできると思うんです。
井上 それはあると思います。基本があるからこそ、いろんな引き出しを出していくことができるんだと思います。それができない人は、「これしかない」っていう型で。
──そこで勝負していかなければいけませんからね。
井上 いろんなことをできない代わりに、自分なりに工夫して。お互いにタイプが違っても、自分のボクシングをお互いに当てはめていこうとする。そこもボクシングのおもしろいところです。
──全く同じ選手はいないですからね。
井上 それに、同じ選手とスパーリングをしても、毎日毎日変わってくるので。その中で、良かった自分を試合当日にベストで持っていけるかどうか。それが勝負強い人間だと思うので。調子が良い悪い、それがあって繰り返される日々の中で、当日にベストに持っていって、結果を残せる人が上に行けると思うから。今日の自分の出来が試合当日に……ってなったときは、それはそれで「自分はベストに仕上げられなかった」ということになってしまう。それでもやっぱり勝たなければいけないんですが。こういう日もあって良い日もあって、だからいろいろ考えながら試合までやっていけるんです。
──「完璧な準備を」といつもおっしゃるじゃないですか。前に「突き指ひとつしたくない」と聞きましたが、本当に繊細な作業なんだと思います。
井上 不安要素をひとつでも残したくないというのがその理由ですよね。
──「自由」はありますか?
井上 え、自由? わりと自由にしてますよ(笑)。
──世界中の選手に狙われている立場じゃないですか。本当に、ひと握りのトップ選手しか味わえない感覚だと思います。われわれには到底耐えられない感覚です。
井上 う~ん……。まあでも、自分はこの立ち位置になって、すごくやりがいを感じてますよ。
──そうじゃなかったら、ボクシングをやってないし、トップを目指さないっていう話ですかね。
井上 そのとおりです。
──最近、ボクシング以外で興味あるものはありますか。
井上 いやぁ、特にないかなぁ。
──もう、ボクシング自体が趣味になってる。
井上 趣味に入っちゃってるんでしょうね。
──さらに「ボクシングがおもしろい」状態だから、それも当然かもしれませんね。今度の試合も楽しみです。
井上 はい、期待してください。頑張ります!
──また試合が終わったら、いろいろとたっぷり聴かせてください。
井上 試合が終わったら、また会いましょう!

5日後の夜、4本のベルトを手にしているのは井上か? それともタパレスか?

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