
気温44度の砂漠地帯、カリフォルニア州インディオのファンタジースプリングス・カジノで行われた恒例ゴールデンボーイプロモーション(GBP)興行。東京五輪の全米トライアルで躍進した看護師資格を持つダリウス・ファルガム(アメリカ)とボーン・アレクサンダー(アメリカ)のライトヘビー級10回戦をメインに全6試合が行われた。
写真 ゴールデンボーイ/クリス・エスケダ 文_宮田有理子
Photos courtesy of GoldenBoy/Chris Esqueda Text‗Yuriko Miyata
〇…メインイベントのライトヘビー級10回戦は、中盤を前にブーイングにまみれてしまった。WBAインターコンチネンタル・スーパーミドル級王座を持つダリウス・ファルガムは当初、ラシディ・エリス(アメリカ)と戦うはずが、エリスが出場不可となって、2日前に代役を引き受けて3ポンドオーバーの体重を作ったベテラン、ボーン・アレクサンダーと戦うことに。しかし、急造ファイトは難しいものに違いない。小柄な体をガードで固めるアレクサンダーを崩そうとファルガムがショートコンビネーションをちりばめるうちに、試合はスパーリングのような様相に陥ることになる。ソフトタッチしかしなくなったファルガムは試合後に「途中で手を痛めてしまった」と事情を明かしたが、アクション好きのファンたちはラウンド中に次々と席をあとにし、初メインイベントに駆け付けたファルガムのサポーターたちと小競り合いもあった。それでも「やれることをやることに徹した」というファルガムが、98対92、98対92、99対91の3-0で勝利を確保。戦績を12戦12勝10KOに伸ばした。2019年末に行われた東京五輪の全米トライアル・ヘビー級で、旺盛な攻撃力で第8シードから優勝を勝ち取ったものの、その後コロナ禍によって選考過程が変更され、東京行きが幻となったトライアル優勝者の一人だ。大学の看護学部で学ぶ“二足の草鞋”だった当時はプロへの関心は薄そうだったが、2021年末にプロデビュー。昨年GBPとの契約に至り、今回が3戦目だった。4月にセルゲイ・デレビアンチェンコ(ウクライナ)と10回フルに戦って以来のリングだった38歳、アレクサンダーは、31戦18勝(11KO)12敗1分。

〇…第2試合のスーパーライト級4回戦で、地元コアチェラの大応援団を引き連れたケイデン・グリフィス(アメリカ)がプロデビュー。ファン・ロメロ(メキシコ)をしっかり引き込み右ショートカウンターを狙って、開始から会場を沸かせる。期待を背負って力みはみえるものの、コンビネーションは鋭く正確で、初回終盤に痛烈な左ボディブローと左フォローでダウンを奪った後、2回43秒、左ボディでロメロの心を折った。ロメロは2戦2敗に。

幼い日から多くの時間をジムで過ごしてきたという18歳。話題のホープ、カーメル・モートンとはアマチュア時代に3度戦っており、やはりライバル心はあるという。「彼はすばらしい選手で、注目されるにふさわしい。それは間違いないことだと思います。でも僕は彼を超えていくつもり。今日がその始まりだと思うととてもうれしい気持ちです。デビューの予定は何度か延期になって今日になりましたが、ハイペースでリングに上がり、キャリアを築きたいです」。2年ほど前にムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)の取材でジョエル・ディアス主宰のジムを訪れた時、東アジアの精鋭たちとタフなスパーを重ねていたのが、グリフィス少年だった。その行方を追っていきたい。

〇…第4試合スーパーウェルター級6回戦。地元コアチェラのボクシングファミリーの一員、グラント・フローレス(アメリカ)がリングイン。変則リズムのサウスポー、ジョサイアス・ゴンサレス(アメリカ)にプレスをかけ、ボディへ顔面へと強打を打ち分けて痛めつける。最後は左ボディでロープ際へ吹っ飛ばし、3回2分34秒で試合を終わらせた。従兄弟のマヌエル・フローレス、アマチュアで全米タイトルを持つ妹のギャビノとともに地元のジョエル・ディアスのジムでトレーニングに励む19歳、フローレスは5戦5勝4KO。ストップからしばらくうずくまったままだったジョサイアスは6戦2勝3敗1分。
〇…第5試合クルーザー級10回戦では、トリスタン・カークルース(アメリカ)がアンソニー・ホロウェイ(アメリカ)と対戦。長身196㎝に恵まれる22歳は、その長身からジャブを上下に打ち下ろし、右アッパー、左フックとシャープな強打を差し込むが、柔軟で技巧に長けるホロウェイを崩せずに時間を過ごす。コーナー下からは、“スリー、フォーだ”と、テレンス・クロフォードのトレーナー、“ボーマック”ことブライアン・マッキンタイアが何度も叫んでいる。全米ボクシング記者協会の2023年最優秀トレーナーに選ばれた伯楽に師事し始めてこれが2戦目となるカークルースは、後半に入ってクリンチが増えるホロウェイの前で、粘り強く速い強打を狙ったが、正面切っての攻めはベテランに耐えきられてしまった。採点はジャッジ3者とも99⁻91。初10回戦での勝利にも反省しきりのカークルースは、15戦14勝(10KO)1敗。代わりにボーマックが、「少しずつだけど良くなっているよ」と笑顔を見せた。ホロウェイは16戦7勝(6KO)6敗3分。
