[Friday Night Notes 7.26]トリニダードが最終回KO勝ちで米大陸王座初防衛

無敗のスラッガー、トリニダード(左)がベテランのスラビンスキを最終回KO

 トム・ロフラー率いる360プロモーションの定期興行『Hollywood Fight Nights』が7月26日、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のコマース・カジノで行われ、番狂わせあり、ダウンシーンありの全7試合に、会場は大いに盛り上がった。

Photos courtesy of Lina Baker/360promotion Text Yuriko Miyata Special thanks to RedGloveNews

○…メインのWBC米大陸フェザー級タイトルマッチで、地元LAのチャンピオン、オマール・トリニダード(Omar Trinidadアメリカ 16-0-1, 13KOs)が左の技巧派ビクトル・スラビンスキ(Victor Slavinskyiウクライナ 15-3-1, 7KOs)を10回2分31秒にKOした。これで4連続KO勝ち、今年1月に獲った地域タイトルの初防衛となったのだが、トリニダードにとって過去一番のタフファイトに違いなかった。

強気な攻撃を耐え切られ、トリニダードは戦法を変えてみせた

 体格に優るトリニダードは、スタートから持ち前の強気の攻撃をみせた。1月に対戦したホセ・ペレスに続き、サンタクルス兄弟が擁するボクサーを前にして、先制のビッグライト、上下攻撃から左フック。パワーパンチでねじ伏せにいく。しかし小柄なウクライナのベテランは冷静だった。前の手の右を防御にもジャブにも使ってリズムをつくり、上下に左ストレートを伸ばしてトリニダードを遠ざける。ダウンシーンを作れずにラウンドを重ねたトリニダードだが、中盤からボクシングに転じ、これが奏功。9回終盤に右をクリーンヒットして追い打ちをかけ、ロープ際でカウントを聞かせると、迎えた最終回。左を振って入ってきたウクライナ人を右ショートで迎え撃ち、見事なダウンを奪うのだ。立ち上がったものの足元が定まらなかった33歳に、レフェリーは続行を許さなかった。「いいスパーリングをしてきたんだ。パーフェクトなタイミングだったね。パワーはあるんだから、当たれば倒しきることができる自信があるよ。レオ(サンタクルス)の選手二人に勝ったんだから、次はレオとやらせてくれない?」と興奮冷めやらず語ったトリニダードには、10月の次戦がすでに予定されているという。

粘り強いスラビンスキを最終回に2度倒してフィニッシュした

○…ダブルメインのWBC米大陸ウェルター級タイトルマッチで、番狂わせだ。360プロが手塩にかけるゴール・イェリツィアン(Gor Yeritsyanアルメニア18-1,14KOs)が、アラム・アミルカンヤン(Aram Amirkhanyanロシア16-0-1, 4KOs)との無敗対決に2-1の判定で敗れ、2月に手に入れたばかりのタイトルを譲ることになった。だが実は、番狂わせではなかったのかもしれない。今はロシア国籍ながらアルメニア生まれのアミルカンヤンとイェリツィアンとは、アマチュア時代をチームメイトとして過ごした仲だという。そして奇しくも双方、アメリカのロサンゼルスを拠点にプロの道を歩んでいる。アマ時代は欧州内にとどまったイェリツィアンはフレディ・ローチの門下で順調に歩み、かたや2013年世界選手権ウェルター級ベスト8という実績を持つ5歳年上のアミルカンヤンは、練習相手を求めてジムを転々とする生活だ。この一戦、アミルカンヤンは意地でも勝つ決意だっただろう。実際、強かった。序盤から、左の打ち下ろしを盾に、イェリツィアンを遠ざけた。元チームメイトが右を狙ってくると、左カウンターをボディにめり込ませた。6回あたりからは足を使い始めたイェリツィアンの右が当たる場面が出てきたが、9回にバッティングで右目尻から出血。アミルカンヤンが攻勢をかける中で試合は終了した。判定は96対94を分ける形で、2者がアミルカンヤンを支持した。有力な後ろ盾を持たない新チャンピオンはインタビューもなく会場をあとにしたが、再戦のオファーは二つ返事で受けるとみる。

アミルカンヤン(右)の長打に苦しめられたイェリツィアン
アルメニア代表チームでともに世界を巡ったふたりが、ロサンゼルスのリングで邂逅

○…「番狂わせ」を覆したのは、スーパーフェザー級6回戦に登場したアベル・メヒア(Abel Mejiaアメリカ5-0, 4KOs)だ。ホセ・コレア(Jose Correa  メキシコ6-10, 4KOs)に初回から圧力をかけて多彩な右をヒットし、順調に見えたホープは2回、右ショートを合わされてフロアに落下。カウント中も足元がふらつき、ダメージは明らかで、レフェリーにストップされてもおかしくなかった。続行を許され、なんとかそのラウンドをしのぎ切ると、続く3回には再び際どいタイミングを狙いに行く。そして4回、右からの返しの左フックをジャストミート。痛烈なダウンで4回55秒、逆転KO勝利を飾った。苦境を乗り越えた経験は、無敗の22歳にとって貴重なものに違いない。

痛烈なダウンから盛り返し、逆転KO勝ちで無敗を守ったメヒア(左)

○…UFCFightPassのライブ・ストリーミング開始、第一試合だったスーパーフェザー級4回戦では、ハワイ出身のジェイブリオ・ペ・ベニト(Jaybrio Pe Benitoアメリカ 5-0, 4KOs)がサウスポーのマイケル・ランド(Michael Landアメリカ 1-5-1, 1KO)に2回 1分30秒KO勝ち。開始からコンスタントなコンビネーションでランドを下がらせたベニトは、2回開始早々に右でダウンを奪う。粘る相手をコーナーに追って連打をまとめてレフェリーストップを呼び込んだ。ハワイ・オアフ島で9歳の時にボクシングを始め、2019年末にプロデビュー。3戦のあと2年半のブランク中に各地のジム、指導者を訪ね歩いて、フレディ・ローチにたどり着いたという。名匠と組んで今年4月の初戦に続き勝利を挙げた26歳は、進撃モードだ。

フレディ・ローチ門下で2勝目を挙げたベニト

○…女子フェザー級6回戦では、イヤナ・ベルドゥスコ(Iyana Verduzcoアメリカ 2-0)がコリーン・デービス(Colleen Davisアメリカ 3-2-1, 1KO)にフルマークの判定勝ちを収めた。映画“スパルタンX”でジャッキー・チェンの敵を演じた伝説のキックボクサー、ベニー・ユキーデの姪の娘で、“ライトフック・ロキシー”の愛称でアマチュア時代から人気のベルドゥスコは、大応援団を引き連れてのプロ2戦目。ライト級で戦った昨年10月のデビュー戦よりもかなり体が絞られ、動きはよりシャープになった。長身のデービスを初回から左ストレートで攻め立て、バッティングによる額からの出血にも耐えて戦う相手を下がらせ続けた。2018年世界ユース優勝、全米トーナメント21度優勝など輝かしい実績を持つ22歳。マッチメイクの難しさが悩みだと実母でトレーナーのコーチ・グロリアは言う。ブランクを避けるためボクシングの団体戦“チーム・コンバット・リーグ”にも参戦してきたが、望むのはもちろんプロの頂上へ向かうキャリア作り。360がプロモートに乗り出すのか。その集客力も興行主にとって魅力であるに違いない。

”ライトフック・ロキシー”ことベルドゥスコ(右)の地元人気はすごい

〇…女子スーパーバンタム級4回戦で、全米7度優勝の元トップアマ、シャンテル・ナバロ(Chantel Navarroアメリカ)がプロデビュー。防御に徹するウィルダリー・リベラ(Wildalys Riveraアメリカ0-3)を左右ロングで追い続けて、結果はジャッジ三者が40-36をつける完勝だった。もう何年も前から、プロモーターのトム・ロフラーが「未来のスター」と宣伝していた選手だ。現在トップランクと契約するスティーブン・ナバロの妹で、2000年代に川嶋勝重(大橋)や徳山昌守(金沢)らの世界王座に挑んだホセ・ナバロは伯父にあたる。この日は当初、第一試合にセットされていたが、結局メイン後のウォークアウトバウトに。しかし南カリフォルニアを代表するボクシングファミリーの一員とあって、多くの観客が残って見守った。ロフラー肝煎りの20歳の今後に注目しよう。

トム・ロフラー(左)が何年も前から注目してきたナバロがついにプロデビュー

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